誉編 順当

電磁加速質量砲レールガン>はその性質上、発射の瞬間には非常に強い電磁波を発生させる。


人間ですら、人によっては、


『頭が痛い』


『耳鳴りがする』


などと口にする者さえいるくらいだそうだ。


それをがくは感じ取っているということだろうか。だが、それだけでは自分が電磁加速質量砲レールガンで狙われているなどと気付くはずもない。<野生の勘>で危険を察知している可能性もあるかもしれないにしても、やはり、電磁加速質量砲レールガンそのものを知っていると考えるのが、いくら信じられなくても順当だった。


……いや、知っていても不思議はないのか……


なにしろ、コーネリアス号の乗員達を取り込んで、その記憶も何もかもをその体内で再現しているあの不定形生物であれば、乗員達の記憶から電磁加速質量砲レールガンのこともデータとして取り込んでいただろうから。


ただ、きょうみずちは銃の存在を知っていてそれに対応しているような素振りは特になかった気がする。その辺りの記憶が発現するかどうかもあくまで『たまたま』なのかもしれない。しかし、少なくとも今回のがくの事例については、


『銃や電磁加速質量砲レールガンの存在とその機能を知っている』


と考えるべきなのかもしれない。


今となっては、あらかじめそれについても想定しておくべきだったという気もしてしまうが、そんなのは所詮、<後出しじゃんけん>に過ぎない。


AIは、人間と違って<空想>をしない。自らが持つ膨大なデータの中に存在しない、いや、人間が作ったフィクションなどについてもデータとして持っているから、常識的物理的に存在しえないものの存在についても知識としては知ってるんだが、そういうものはあくまで、


<人間が空想の中で作り出した、実在しえない存在>


として慮外に留め置かれてしまう。そんなことまでいちいち考慮に入れていては、考えるべきことが膨大になり過ぎてしまって思考速度に影響するからだそうだ。


だから、エレクシアがそれについて想定できなかったことについては、彼女に責任はない。


『野生の動物が電磁加速質量砲レールガンのことを知っていてしかもそれについての対処法も理解している』


なんて、明らかに空想上の話について思い付くべきだったのは、人間である俺の方だ。しかし俺の方も、エレクシアからその可能性について提示してもらえなかったことで完全に失念していた。


だがそれも彼女の所為じゃない。道具である彼女を使う人間の側の問題だ。


結局のところ、俺が迂闊だったということだ。


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