誉編 予感
いつも俺の何もかもをお見通しのようなエレクシアを戸惑わせることができて、俺は悪戯っ子のように喜んでいた。
ロボットである彼女の前でこんなにも素直になれるのがただただ嬉しい。
エレクシアは確かにロボットで、機械で、俺と俺の家族の命を守る為の単なる<道具>にすぎない。
だが、その事実さえ今は愛おしい。
彼女がロボットだったからこそ、ジャンク屋で彼女を見付けた頃の、心底病んでいた俺のことも見捨てずに傍にいてくれたんだからな。おそらくシモーヌでさえ、あの頃の俺とは『関わりたくない』と思ってしまうだろう。
彼女には本当に感謝している。
人の出逢いというものは、タイミングにも影響されるんだろうな。エレクシアと出逢って、彼女と暮らして、少しばかり心に余裕ができ始めていた時にこの惑星に不時着して、
この順序じゃなかったら、今の関係はなかっただろう。
それを思うと、本当に奇跡のようだ。
俺がそんな風にして幸せを噛みしめていたちょうどその頃、ここから数十キロ離れた辺りで、非常に強い雷雲が発生していた。こちらでも母艦ドローンを通じてそれは観測されていて、落雷などの被害を避けるために母艦ドローンがその場を離れた時、でかい落雷があった。
すでにかなりの距離を取っていた母艦ドローンのカメラ映像にノイズが入るほどの強烈な落雷だった。
「…ん? 雷か……?」
俺の耳に届いた雷鳴は、さすがに数十キロ離れていたことで、いつもの遠雷という印象しかなかった。
「ですね」
シモーヌが呟くように応える。
「ここより西に約七十キロの地点で強い落雷が観測されました。付近を調査中だった母艦ドローンに被害はありませんでしたが、映像が捉えられています」
そう言ってエレクシアが映してくれたタブレットの画面には、まるで爆発のような雷撃が地上を打つ様子が映し出されていた。
それを見た瞬間、俺の脳裏に嫌な予感がよぎる。
「……そう言えば、
ついそう呟いてしまったが、実際にはこの規模の落雷そのものは、ほとんど毎日、俺達がいる台地のどこかしらで発生している。だからいつものことのハズだった。しかし、何となく思ってしまったんだ。
「……ただの杞憂ならいいんですけど……」
シモーヌもそう応える。
だが彼女の表情にも不安が滲み出ていた。
<予感>ってやつは、そのほとんどがシモーヌの言うようにただの杞憂に終わるんだが、たまに当たってしまうことがあるのも事実だ。
この時のそれのようにな……
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