誉編 新しい家
新暦〇〇二八年三月十六日。
しかし、そうやって多少の不安を感じることはあっても日々はすごく穏やか(俺にとっては)過ぎていくので、すぐに押し流されてしまう。
なにしろ、
仮設の家の方ははっきり言って狭すぎてロクに遊べないし、雨が降ったりした時には<母屋>の方で遊んでもらったりするんだが、ガッと柱にしがみついたと思ったらそれをするすると上り、梁を自在に行き交ったり。
もっとも、足の形が人間のそれなので、手とよく似た形になっているパパニアンに比べるとまだどこか頼りなくて危なっかしい印象もある。
だがそれ以上に問題なのが、
「があっ!!」
と
それでも、元々の気性なんだろうな。まるで懲りる様子もなく、
俺としてはただただ微笑ましい光景なんだが、自分のパーソナルスペースを侵されていると感じているのか、
「これはマズいかもしれないな……」
さすがに家族と言えどその辺りの住み分けの徹底は必要だと感じ、
「よし、
と決断した。
俺がそう決めれば、エレクシアは躊躇わない。
俺達の<縄張り>であり、ドーベルマンDK-aが常に巡回してることから他の動物達はほとんど寄り付かない密林の一部を、イレーネと共に伐採、根も掘り起こして整地し敷地を広げ、
今の家を建て、それを維持してきたノウハウを活かし、かつエレクシアとイレーネの二機体制と、敷地を広げている間にセシリアがコーネリアス号との間で部材を休みなくピストン輸送してくれたおかげもあって僅か四日で建てられた<新しい家>は、内装こそこれから順次手を加えていくことになるものの、建築物としては俺のそれよりもさらにちゃんとしたものになっていた。
正直、複雑な気持ちもないわけじゃないが、家族が増えた象徴だ。ここは素直に喜びたいと思う。
すると、密林の中から、俺達の様子を窺ってる気配が伝わってきた。敷地を拡げてる時から既にそうだったんだが、
なんてこともありつつ、俺達家族の新しい生活が始まったのだった。
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