誉編 竜葬
人間がまだ地球でのみ暮らしていた頃には、かつて、鳥に遺体を食べさせて葬る<鳥葬>なる風習があったと聞くが、
まあ、パパニアンの遺体を食べるのは
ちなみにマンティアンは動いている生き物しか食べないので、パパニアンの遺体を持ち去ったりはしない。
人間の感覚では血生臭くて嫌悪感すら覚える習慣だろうが、地上に降りて遺体を埋葬したりとかしているうちに
樹上にいてもマンティアンやパルディアという天敵から常に狙われているわけだし、わざわざ危険を増やすこともないだろうな。
<知能>を磨くという形で力を得た人間と違い、脳が持つ機能の大半を肉体の制御に全振りしている彼らにそれを期待するのも的外れだと思うしな。
「これはあいつらの摂理だ。手出しは無用」
一部始終を見届けていたメイフェアに、俺は改めてそう命じていた。人間の感覚に準拠しているメイフェアにとって<竜葬>は、やはり受け入れ難いことではあるからな。
「……そういうものであるということは、理解しています……ですが、メインフレームに大きな負荷が掛かってしまうこともまた、事実なのです……」
そう返した彼女の言葉は、どこか不満げなものでもあった。
だが俺はそれを責める気にはなれない。<竜葬>に対して抵抗感があるのは俺やシモーヌも同じだ。そんな俺やシモーヌに比べればメンタリティが野生のそれに近い
そう。受け取り方は人それぞれだ。
何をどう感じるかは皆違う。俺とシモーヌとでも、やはりまったくの素人だった俺と、生物学の専門家であるシモーヌとでは、割り切り方には差があるだろう。
でもそういうものだと思うんだ。
これまでにも何度も言ってきたことだが、感じ方、受け取り方は違っていて当然なんだ。自分の価値観を他人に押し付けるのはトラブルの原因にしかならない。
俺達がこうして平穏に生きていられるのは、互いの違いを認め合っているからこそのものだ。
でなければこの<群れ>は、とうの昔に空中分解してただろうな。
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