誉編 葬送
新暦〇〇二七年八月二十九日。
<その時>を迎えようとしてるんだろう。
すると、
ただ、当の
口もしっかりと閉じていられないらしく、常に涎を垂らしているような状態だ。
実はこの時の
「伴侶として、というよりは、もしかすると母子としてという感じなのかもしれませんね。母親の姿を重ねてしまうのかも……」
シモーヌのそれは、実は明確な根拠があってのことじゃない。本当に<ただ何となくの印象>にすぎない。もしかしたらあくまで伴侶として傍にいるだけなのかもしれない。
だが、基本的に、自分が生まれた群れから離れないことも多い雌と違い、巣立ちによって自分が生まれた群れからは離れ、その後、生涯、母親と再会しないことも多い雄の場合、伴侶である雌に母親の面影を求めてしまうこともないとは言えないのかもしれないと、俺も思ったりする。
まあそれがいずれにせよ、あくまで当人達の問題なので、俺達がどうこう言うことでもないが。
それに、
嫌われ者だったかもしれない
新暦〇〇二七年九月五日。
夕焼けに空が赤く染まる中、
涎を垂らしたままの、決して『美しい』とは言えない姿ではありつつ、それでも暴れたり苦しんだりすることはなかった。
ここ一ヶ月ほどは完全に<認知症>の症状も見せていた彼女だったが、それを見て思ったよ。人間が認知症になるのは、<死の恐怖>を和らげるためなんじゃないかって……
実際、そういう説を唱えている専門家もいるそうだ。
息を引き取り、枝から落ちそうになった
それから、闇に沈んでいく地上にいくつもの小さな光が見えたかと思うと、どこからともなく
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