誉編 機械であり道具
新暦〇〇二七年五月二十六日
人間はどうしても、エレクシアやセシリアに対して、
『薄情だ!』
と思ってしまいがちかもしれないが、彼女たちはあくまで<機械>であり<道具>だ。その辺りをわきまえないからついつい人間と混同してしまう。
きちんと彼女達が、
<人間とは別の存在>
であることを認めた上で受け止めないと、昔の俺のように、彼女達に対して必要以上の嫌悪感を抱いてしまうのかもしれない。
ロボットは道具なんだ。道具には権利もない代わりに責任もない。彼女達に人間の感情をぶつけるのはただの八つ当たりに過ぎない不毛な行為なのだろう。
なので俺は、パパニアン達に入れ込んでるメイフェアが正しくて、エレクシアやセシリアが間違ってるとは思わない。彼女達をそうしたのはあくまで人間であって、人間の都合によって仕様が変更されているだけに過ぎないんだからな。
なお、イレーネは、メイフェアと同じく<感情(のようなもの)>を本来は装備していたものの、人工頭脳の一部が破損していて、仕様通りに動作していない。
その所為もあって、現在は、感情どころか表情を作ることさえできない状態だ。
だからイレーネについてはこの種の話をする意味もない。
なお、ロボットは、たとえ故障しても人間に危害を加えないようにする為に、<倫理回路>が電源そのものを兼ねていて、そこに異常があった場合には直ちに電源が切れるようになっているそうだ。
つまり、イレーネが動作していられるということ自体が、倫理回路については異常がないという何よりの証拠になっている。
メイフェアについても、パパニアンに対して同情的に振る舞ってはいても、それを理由に人間に対して反旗を翻すようなことはない。それができないように作られているという時点で、彼女もやっぱりロボットで、感情のように見えているものも、あくまで(のようなもの)であって、人間とは違うという証拠でもあるんだろうな。
それでも彼女が
道具に対して<感謝>というのも変かもしれないが、その辺りも人間ならではなのだろう。大目に見てもらいたい。
<ロボット排斥主義者>達からは唾を吐かれそうでもあるけどな。
彼らは、ロボットが人間にとってはどこまで行ってもあくまで道具ということを理解できないんだろうなって気がする。
そういう分別が付いてないからこそ、まるで人間に向けるそれのような憎悪や嫌悪をロボットに向けるんじゃないだろうか。
どこまで行ってもロボットは道具だ。
ただの道具に感情をぶつけるのはおかしいと俺は思うんだ。
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