誉編 日々 その1
新暦〇〇二七年五月十六日。
朝。
その姿は、もうほとんど<年老いた母親の世話をしている息子>って感じだったが。
彼女に残された時間は決して多くはないだろう。その残り少ない時間をできれば幸せに過ごしてほしいと思う。
確かに理不尽なことをたくさんしてきた彼女だったが、その<報い>は先払いでもらってきたと考えることもできるのかもしれない。
もちろん、だからといって許されないことなのも事実ではある。
しかしそれについては
報復が連鎖しないように。
もっとも、ここまで丁寧に対処してくれるのは
それでも苦しみや恨みがそれだけ少なく済むのなら、それ自体に意味があるのかもな。
また、そういう穏やかさはこの群れだけのことだというのも事実なのだろう。
と、その時、
「うあーっっ!!」
という叫び声が密林に響いた。
哨戒に出ていた若い雄の声だった。何か緊急事態があったようだ。
それを耳にした瞬間、
その顔はキリリと引き締まり、戦う男の顔になっている。
「他の群れの干渉です」
メイフェアが報告してくる。
それ自体はよくあることであり、慌てるほどではないものの、出会い頭の事故のようにして犠牲が出ることもある。
メイフェアもそれを警戒していた。
自身にリンクさせたドローンを現場に数機集結させ、状況を把握、必要とあれば援護する準備を整える。
そのドローンのカメラには、
これはなかなか緊張感があるぞ。
いや、はっきり緊迫していると言っていい。
互いに牽制しあい、小枝や果実を散発的に投げつけあったりもする。
これが次第にエスカレートして本格的な衝突になったりもするんだが、そこで<事故>が起こることもある。
たとえば、
こんなことは滅多にない。少なくとも、俺達が記録を取り始めてからは、
この時の一件も、メイフェアが救助に向かったが位置が悪く、間に合わなかったんだ。俺が想定していたのは、一対多数でリンチのようになってという場合に、命まではということで介入する形だった。
しかし、こういうこともあるから気を付けないといけないわけだ。
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