本能に従えば(何とかなるか?)

新暦〇〇二四年十月十一日。




それから三日後、すっかり傷が癒えたじゅんを治療カプセルから出し、ベッドに寝かせると、三十分ほどで目を覚ました。


「う…あ……?」


自分がどうしてそんなところで寝てたのか分からないらしく、不思議そうに辺りを見回す。


じゅん、良かった……」


ひかりが潤んだ瞳で見詰めながら声を掛ける。


「ひあり…」


まだ発音がたどたどしいじゅんだったが、ちゃんとひかりの名を呼んだ。


それに応えるように、ひかりじゅんを抱き締める。そして彼の胸に顔を擦りつけるように埋めた。ひそかが俺に甘える時に見せる仕草の一つだ。


すると、


「うあ~」


と声を上げながら、じゅんひかりの頬に自分の頬を擦り付けた。彼女が自分を受け入れてくれたことを察して、気持ちが昂ってきたんだ。


こうなるともう、場所なんか選ばない。


「お邪魔虫は退散退散」


と、俺とシモーヌとあかりとエレクシアは、ひかりじゅんを残して光莉ひかり号から出て、家の方へと戻った。


今後も、ひかりじゅんが睦み合う時には光莉ひかり号の部屋を使ってもらうことにしよう。


ほむらさいあらたりんの睦み合いについては散々見せ付けられたが、さすがに見た目には完全に人間のひかりじゅんのそれは生々しすぎて照れくさい。


しかし、さて、上手くいけばいいが。


なにぶん、初めて同士だし。


でもまあ、本能に従えば何とかなるか?


それにボノボ人間パパニアンは、名前の由来となったボノボに似た習性を持っていて割と子供の頃から濃密なスキンシップを行うし、ひょっとしたらじゅんも結構、手慣れてたりするかもしれないな。


どうであれ、大事にしてあげて欲しいよ。


人間の場合、仲の良さそうなカップルでも、肌を合わせた時の相性で気持ちが冷めてそのまま別れるっていうのも割と聞く話だ。


かく言う俺も、人間社会にいる時にも女性とはそれなりに付き合いもあったが、関係を持った途端に連絡が取れなくなった女性もいる。


何が気に入らなかったのかそれともたまたまか、理由はいまだに分からない。そんなに大きな失敗はしてなかったと思うんだが、やっぱり、『自分とは合わない』みたいに思われたのかね。


ま、そんなことも考えつつ、二人のことは二人に任せるしかない訳で、俺としては上手くいってくれるのを祈るしかないんだよな。


<孫>はもうこれまでにも何人も生まれてるが、人間に近い姿をした子はまだだからな。これまでとは違う感じもあるのかもしれない。


その辺りも、とにかく会ってみないと分からないが。


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