やっと俺の方も(開き直れた気がする)

新暦〇〇一一年十月二十五日。




ほむらさいあらたりんの関係は、日を追うごとに濃密になっていく気がする。


キスも、軽く唇を触れ合わす程度のものから、完全に<求めあう者同士のそれ>になってるし。


まあそうなってたのはかなり以前からだが。


とは言え、成り行きを静観するということにしたんだし、口出しするつもりもないものの、気持ちとしてはやっぱり複雑なんだよな。


ミドルティーンくらいに見えてたってそれはあくまで人間である俺から見ての話で、人間のように大人の真似をして興味本位でするというのとは違うと思う。しっかりと本能に従って、ほむら達の感覚では十分にそういうことができる相手だと認め合ってるんだろうな。


とは言え、絵的には非常に『ヤバい』気がする。


「学術的な見地から見ていると割り切れば、割と平気ですよ」


シモーヌはそう言うが、そりゃ彼女はプロの学者だからなあ。


俺はそこまで割り切れないというのは正直ある。割り切ろうとはしてるけど、やはり難しい。リビングとして使ってる部屋で二人が濃密なキスをしてたりすると、ギョッとしてしまう。


う~む。俺は学者には向いてないということなんだろうなあ。


とは思いつつ、平静を装う。


いつものようにどたばたと家の中を走り回って疲れたら寛ぎながらイチャイチャとって感じか。


熱を帯びた目で見詰めあって、互いの体を抱きしめあって、むちゅ~っと。


うん。完全に熱愛カップルのそれだな。


そういうのを、子供にも見えるのがやってるから変な雰囲気になるんだ。と言うか、俺がそういう目で見るからそう見えるんだ。これはあくまで獣同士の求愛行動に過ぎない。それだけの話なんだ。


……話なんだって。ちくしょう……


本当に、変に人間の特徴が残ってるから始末に負えないんだよな。二人が完全に獣の姿だったらここまで気にならないんだろうが。


それに、キスの仕方がまた人間のだからなあ。妙なところだけ人間っぽくて。やれやれだ。


などという俺の戸惑いなんかどこ吹く風で、二人はすごくすごく仲がいい。


という二人に比べると、あらたりんの方はまだ『大人しい』気もする。物陰に隠れるようにしてチュッチュチュッチュと、ほむら達のに比べればやっぱりまだ可愛い感じなんだ。性格の差なんだろうか。


とかなんとか言ってるうちに、ほむらさいがとうとう、<一線>を超えてしまった。


はあ……時間の問題だとは思ってたが、せめて親の目の前ではやめてほしかったなあ。というのも人間の感覚でしかないのか。


あいつらにとっちゃそれが普通なのか。なにしろ、二人の母親であるひそかふくも、まったく平然としてるし。


で、そうなってしまったってのがはっきりしてしまうと、やっと俺の方も開き直れた気がする。


完全に開き直れるまではいろいろ葛藤もありつつ。


やれやれ、長かったな。


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