種族の壁(薄々分かっちゃいたんだが)

新暦〇〇一一年九月二十五日。




こうやって次々と子供達が生まれてくるということは、ほむら達も当然、大きくなってきてるということだ。


実年齢はあれだが、見た目にはミドルティーンくらいにも見えるような感じで、たぶん、精神的にも思春期真っ最中ってところなのかもしれない。もう十分に巣立ってもおかしくない頃だ。それどころか、ほまれめいしんは今のほむら達と同じ年齢でもう子供できたもんな。かいにいたってはさらに早かったし。


取り敢えず今のところは巣立つ様子もないが、もし巣立つとしたらどうするつもりなんだろうとは思う。


ボノボ人間パパニアンであるほまれあらたは密林が主な生息地だし、ライオン人間レオンさいりんは草原が主な生息地だ。


しんげんに合わせてヒョウ人間パルディアのような暮らし方をするようになった。木に上るのも今ではお手の物だ。家に帰ってきてからはさすがにボノボ人間パパニアンのように屋根に上ったりはしないものの、すでに草原で生きるつもりはなさそうではある。


「冷静に考えると、しんの例もあることですから、ライオン人間レオンが密林に適応するのはそれほど難しくないようです。木に上るのも割と上手いですし。


ただ、逆に、木に上ることが自らを守る手段でもあるボノボ人間パパニアンが草原で生きるのはリスクが高いでしょう。平地を走る速度では、ライオン人間レオンには遠く及ばない。ましてやオオカミ竜オオカミが相手だと話になりません」


と、シモーヌは分析する。


「そうなると、このまま密林で暮らす方がまだ安全ということか」


「そうですね。あくまで『比較すると』なだけですが。


ただ、問題はそこじゃないかもしれません」


「<種族の壁>…か」


「はい。この家で暮らしてる限りは種族の違いはそんなに大きな問題にはならなくても、自然の中に戻ればお互いの種族の違いからくる習慣や食生活のズレは無視できないものになるでしょう」


「確かに……


となるとあの子達は、このままずっとこの家で暮らすことになるのかな」


「結論とすればそういうことになるでしょうね。この家と言うか、家は別でもいいかもしれないですが、この環境があの子達には必要かもしれません」


「自然は戻れない…?」


「自然の中ではこの出逢いはなかった訳ですから。あったとしてもこうは上手くいかなかったでしょうね」


「……いずれこういうこともあるかもとは思ってたし、ひかりあかりも自然には戻れないから、ほむら達もってことだな……」


薄々感じてはいたものの、改めて事実を突きつけられると結構くるな。


あの子達がもし、同種をパートナーとして選びなおすのなら自然に戻れる可能性はあるとしても、もし、今のままなら……


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