何かあった時の(備えは大事)

新暦〇〇〇九年四月五日。




家のことがかなりできるようになったからか、ひかりは今度はタブレットをいじり始めた。その操作方法とかを覚え、俺の宇宙船やコーネリアス号のAIに対して指示を出すことも覚えようとしてるのかもしれない。


彼女が自分からやろうとしてることについてはやらせてもいいと思ってる。完全に人間としての能力を持ったのがもう一人増えてくれたら、またいろいろ手分けしてやれそうだし。


かと思うと、あかりあきらとも遊んでやってるようだった。あかりあきらも、割としっかり歩き始めたしな。しかもあかりは、ひかりがそうだったように、「あ~」とか「な~」とか、喃語を話し始めてる。この子もどうやら人間の言葉を話せるようになるようだ。


あと、天気のいい日なんかには、ひかりあかりあきら、イレーネで、水遊びしてたりもする。


子供らだけで遊ばせておくのは危ないから、俺かシモーヌ、及びエレクシアかセシリアが必ず見守るようにはしてた。


ただ、イレーネも、『人間を守る』というロボットとして根本的な機能はちゃんと生きてるから、子供達の遊びに付き合ってる時、危険があったりしたらすっと手を差し伸べたりもしてくれてた。表情は変わらないのに、さすがだな。


もっとも、その『表情が変わらない』という部分がひかりにも通ずるところがあり、なんだかひかりの方も、そういう意味でもイレーネには親近感を感じてるらしい。意外な効用だった。


仏頂面の先輩としてはエレクシアもいるんだが、彼女はひかりにとっては<母親>だからちょっと違うのか。


なんていう微笑ましい光景を眺めつつ、俺はヒト蛇ラミアの監視を続けていた。すると残念なことに、またコーネリアス号に近付きつつあるのが分かった。


「あのまま離れて行ってくれりゃあなあ」


と、ぼやいても始まらない。今度またシモーヌとメイフェア、セシリアとイレーネで交代でコーネリアス号に行くことになる。


「何もないのが一番ですけど、何かあった時の備えはしないといけませんね」


シモーヌもそう言ってくれる。


万が一、メイフェアもイレーネもいない時に近付いてきたら、そうかい達にはコーネリアス号の中に避難してもらうようにしたい。


そうかいは慣れてるから平気だろうが、群れの仲間達にも慣れてもらわないとな。


その練習として、コーネリアス号の中で食事してもらうことも考えてる。メイフェアとイレーネに、餌で釣って中に誘導してもらうことにしよう。


セシリアは、一般モデルだし万が一群れに襲われたりしたら、最悪、壊れる可能性も高いので彼女にはさせられない。そうかいは彼女のことをよく知ってるから襲ったりはしなくても、群れの他のライオン人間レオンにしてみれば獲物にも見えるだろうからな。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る