ドーベルマンDK-a零号機(う~ん、少年の心がそそられる)

新暦〇〇〇九年四月十二日。




『何かあった時の為の備えは大事』


ということで、メイフェアやイレーネがいない時の為に、新たな<警護用ロボット>の制作を思い付いた。


設計はエレクシア、制作はコーネリアス号AIとメイフェアで、この惑星で手に入る材料を使って作る。


設計図をセシリアを通じてコーネリアス号に送信すると、AIがさっそく、それに従って工作室を稼働させ、部品を作り始める。


と言っても、部材の調達は工作室ではできないし、機能も完全には回復してないのもあって、メイフェアの手も借りる訳だ。


その上で、構造は簡潔に、整備性の高さとコスト圧縮と制作期間の短縮を重視して設計されたそれは、僅か一週間で形になった。


「ドーベルマンDK-a零号機だ」


と、俺が掲げたタブレットの中には、剥き出しのフレームに二本のマニピュレーターとクローラーを備えた四本の脚を持った。大昔の<ロボットらしいロボット>の姿があった。


「お~」


とシモーヌは単純に感心してくれる。


だが、エレクシアは、


「子供の玩具ですね」


と、自分で設計しておきながら辛辣だ。まあ俺が出した条件で設計できるものとなればこれということだったんだが。


「最低限の機能を持ち、今調達できる材料で作れるものってことだからこれでいいんだよ!」


<ドーベルマンDK-a零号機>は、その簡便な外見とは裏腹に、それなりに役に立つ(予定)のロボットなんだ。


「カメラをはじめとした各種センサーを装備。コーネリアス号のAIにより制御され、ロケット砲一門、ショットガン一丁、ハンドガン二丁を固定武装とし、そこにマニピュレーターを備えて用途に合わせて武器や工具を使え、クローラーを備えた四本の脚でどんな地形にも対応する、万能ディフェンサーなんだからな!」


「…はあ…」


盛り上がってる俺とは裏腹に、さすがにシモーヌもついてこれなかったようだ。ひかりやイレーネに至ってはまったく無反応だし。


いや、分かってるよ。現状で手に入る材料でこの短期間に作ったロボットなんていくら武装させても、一般仕様のセシリア相手に善戦するくらいの性能しかないのはな。エレクシアはおろか今のイレーネにだって一秒も持ちこたえられないだろうことは重々承知してる。


だが、ここでの脅威はあくまで<野生の獣>であって、超性能を持つロボットじゃない。あのヒト蛇ラミア相手にそうかい達の警護ができればそれでいいんだ。


それで…!


と言っても、普通に人間社会にいた時にこんなものを作れば、即、テロ準備罪で逮捕、実刑は免れないけどな。


でもなあ、なんか閃いちゃったんだよ。小さい子供の頃に憧れてたメカメカしいロボットを今こそ作る時なんじゃないかって。


だって今のロボットって、戦闘用ですら平時は人間に威圧感を与えないようにとかそんなことばっかり気にしてちっとも『らしく』ないんだ。


こういうのがいたっていいじゃないか!


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