『せっけんは、UFOだった』

やましん(テンパー)

『せっけんは、UFOだった』

《このおはなしは、妄想による、フィクションです。実際のこの世の事象や、個人、団体などとは、一切無関係であります。また、科学的考察は、まったく行われておりません。》 


 

         🧼    .。o○    🧼    



 おふろという場所は、大変に良い場所ではあるのでしょうけれど、危険性も常に付きまとう場所です。


 すべって転倒しやすく、また、急に熱いお湯に入ったり、寒い外部に出たりすると、身体がショックを受けて、いずれにせよ、下手をすると、命が危ないこともあります。


 注意が必要です。



 さて、あるばん、やましんは、おそるおそる、おふろに、つかっておりました。


 面倒くさいし、いろいろ心配ごともあるので、身体を洗ったり、髪を洗ったりは苦手なのですが、まあ、衛生上も、がまんして、行う必要があります。(腕や肩が痛くて、つらいのです。)


 ボデ-・ソープなる液体せっけんを使うことが、最近は多いのですが、在庫切れにも、よくなります。


 なので、固体のせっけんさんも、置いております。


『あららら、からではないですかあ!』


 と、ボデー・ソープの入れ物を、おちょこのように、さかさにして、振ってみましたが、すでに何も出て来ない。


『まあ、空だよなあ、と、思いながら、一週間は使ったものな。』


 そこで、ひとりごとを、ぶつくさ言いながら、やや、お湯を浴びすぎて、ぐたぐたになりかけの、固体せっけんさんを、つかもうとしました。


 やましんは、裸眼だと、視力0.2くらいしかありません。


 つるっ!


 『あ、逃げた! くそ~~~。』


 やましんは、逃げたせっけんさんを、再度、つかみにかかります。


 つるっ!


 『あららああ~~~~~。しぶといやつめ。』


 つかまりません。


 つるっ!


 つるっ!


 っと、逃げ回るのです。


 『くっそ~~~~~、しかたがない、両手で行こう。』


 うなぎさんを、しろとがつかみにかかるみたいに、せっけんさんは逃げまわるのです。


 『うが~~~~~!! ゆうこと聞け! もう、みんなで、やましんを、いじめるんだあ~~~!!!泣いてやるう。・・・あ、こら、おとな・し・く、おなわを頂戴いたせ!』


 しかし、やっと、つかまえたか、と思った瞬間、なんと、せっけんさんは、やましんの手から逃れ、窓から外に、勢いよく飛び出しました。


 『あらあああああああ~~~~~! おおい、どこにゆくの~~~~?』


 地に落つべきはずのせっけんさんは、なんと、お空に向かって、ぐんぐんと上がってゆくではありませんか!


 ご承知のように、秒速約11.2キロメートル、時速40,300キロメートル以上でないと、地球から脱出ができません。


 その、はずです。


 『はあ~~~~~。おしあわせに~~~~!』


 やましんは、もう、あんぐりと、おくちをあけて、見上げる以外には、方策がございませんでした。



 で、その、同じころ、地球から飛び立つ、大量のせっけんさんたちがいたのです。



 『どうだ、回収はうまくゆきそうか?』


 と、巨大なアメーバのような宇宙人さんが言いました。


 すると、ちょっと小さいのが応えました。


 『ええ、教授。だいジョブです。ずいぶん、こすられて、削られたのもありますが、予定数はきちんと回収し、この星の、あの不格好な生き物の実体のデータが、かなり得られそうです。』


 『そうか。なにしろ、あのような生き物は、初めて見た。体の内部に固体の棒が複雑に入っている。しかも、移動は二本の触手で行い、不安定で、ふらふらだ。大切な脳髄が、一番危ない、上部にあり、周囲の光景は、おおかた二つの器官でしか見えないようだ。あれでは、後部からの攻撃には脆弱である。移動も、ゆっくりしか行えない。』


 『ええ、ただ、先生、一部、たいへん優れた能力を持つ個体もあるようですよ。まあ、かならずしも、なにが優れているのかは、我々同様に、すぐには言い切れないみたいですが。よく、調べなくては。』


 『君は、良い弟子だな。もちろんそうだ。何が良いのかは、見た目や、単純な機能の比較だけでは、読み切れないものだ。また、変わるものでもあるだろう。しかし、まずは、基本的な構造がわからなければ、話になるまい。もしかしたら、我々にとって、猛毒を持つのかもしれない。部外者には、獰猛な性格かもしれないしな。』


 『良く調べましょう。その第一歩が、あの固形物で、あの、いちばん知能が高そうな種族の、良く利用するものらしいですし。』


 『ああ。つぎには、ほかの用具も使って、慎重に行こう。うっかり、有害な種に、宇宙進出されては困るでな。』


 『はい、先生。まあ、まだ、原始的な推進機関しか使えないようですし。』


 『いやいや、あなどってはならぬぞ。なかなか、なかなか。』


 せっけんさんたちは、その姿が、宇宙に溶け込んでいて、あまりよく見えない、巨大な宇宙船に、どんどんと、すいこまれてゆきました。


 ちょっと間抜けな宇宙人さんでしたが、地球人類の新しい未来が、開かれる時が来たのかも、しれませんでした。





  ******************  🧼 🧼 🧼  おしまい










 


 

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『せっけんは、UFOだった』 やましん(テンパー) @yamashin-2

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