違うよ

 彼女と目的地に向かってのんびり歩いた。

「さっきさ、私が公園来たときに反対側に向かって走って行ったの、高崎さんだよね」

「やっぱり、見えてたよね。そう、高崎だよ。たまたまこの公園を通ったら僕がいたから話しかけたらしいよ」

「何話したの?」

「それは……」

 話すべきだろうか。

「私に話せないような内容なの?」

「そういうわけではないけど」

「じゃあ話してよ」

 そして僕は先程高崎と話したことを彼女に話した。互いの告白は抜きにして。

「それだけの話だよ」

「本当にそれだけ?」

「嘘吐いてると思う?」

「まあ、信頼してるから、嘘吐いてるとは思わないけど」

 信頼してると言ってくれる彼女に、やはり嘘は吐けない。

「……ごめん、嘘吐いた。他にも話したこと、あるんだ」

「それも、話してよ」

 仕方なく、互いの告白のことももごもごと話した。

「へぇ……そうだったんだ」

「うん。僕も驚いた」

「私も驚いた。なんか、悲しいね」

「いいのかな、僕だけこんなに幸せで」

「え?」

「高崎もアイツも悲しいはずだよね。辛かっと思う。なのに、僕だけこんなに幸せでいいのかな」

「違うよ」

「え?」

「“僕だけ”じゃないよ。私も、幸せだよ」


 あぁ、彼女はきっと、どこまでも純粋で優しい、綺麗な心を持っている。


 秋の空の色はとても深く、少し、温かかった。

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