第17話新たなる日常
第17話 新たなる日常
教室でラノベを読む。それは死と隣り合わせの命懸けな行為と言っても過言ではない。ラノベや漫画は普通のほんと比べて、表紙の自己主張が強いから、一目表紙を見た瞬間に何を読んでいるかがわかる。人は誰しもオタクと言われたい人間なんていない。だから、本にカバーを掛けたり、机の下で読んでみたりと様々な工夫を凝らす。
じゃあ、読むのやめれば良いじゃんとか言う奴には、ガチパンチをお見舞いする。教室で、もし読んでいるのがバレたらどうしようと言うスリルを感じながら読むのが良いのである。
でも、その静寂は壊された。金髪系JKアリスによって。
「ねえ、山田君。何読んでるの?」
アリスは机の下で本のカバーを掛けて、なんなら難しい本を読んでいますよと言うアピールの為に眼鏡までかけて読んでいた俺の本を剥ぎ取った。俺は滅多に見せないガチの焦りで、それを取り返そうとする。しかし、普段から異常な速さのスマホ操作で指を鍛えているJKの方が速かった。
「え?何これ?小学生しかいないんですけど。」
こう言う時の対応策は二つあると思う。一つは俺のじゃないからとシラを切る。カバーまでかけて読んでいて、それは少し見苦しいが仕方ない。もう一つは作品の素晴らしさを伝えること。もしかしたら男子からの人気は得られるかもしれないが、バレンタインやクリスマスなどは一人で寂しくゲームをして、バレンタインなんて日本の文化じゃねえし!と言い訳することになってしまう。
だけど、俺はその上をいった。
「あれ?知らないの?これ、知らないとか本当に高校生か?」
知っているのが当然だろと言うスタイルで話す。しかし、アリスの周りに誰かいたら使えないこの作戦は瞬く間に破れさった。奴は他の人に聞いて回りやがったのだ。
「ねえ、これ知ってる?」
みんなの答えはまちまちで知らないとか、ロリコンじゃんとか、それは俺の嫁だとか色々聞こえた。だけど、反応的にはこれから高校の間は彼女が全くできないと言うほどではないように見える。だから、俺は安心して椅子の背もたれに寄りかかった。そうして、麗華とか言う死神はやって来た。
「あー。これあなたが部屋でフィギュアの服を脱がして、ニヤニヤしながら写真撮ってた奴じゃない。ああ言うの本当にキモいからやめた方が良いわよ。」
思わず、周りの空気が冷えるのがわかる。俺はこの世界が滅びた気持ちがした。
「ふぐっ。ふぐっ。」
泣いている俺に新海やクラスの男子たちが優しく声をかける。次元さえ超えれば会いに行けるんだから微分と積分を一生懸命勉強しろとか、お金さえあれば恋愛はできないけど結婚はできるとか言うアドバイスを彼らは伝え続ける。
「ねえ、山田君。少しご飯を食べに行かない?」
西園寺さんがそう話しかけると、俺の周りにあんなにたくさんいた男たちは急にいなくなる。あんなに偉そうに俺に話していたのに、可愛い女の子が来た瞬間にどこかに行くとか、どんだけこいつらはインキャなんだろう。
「うん。」
そう言って西園寺さんを見つめ返すと、なぜか顔を赤くして下を向いて目をそらされる。普通にそう言うのは傷つくからやめて欲しい。もしかして、西園寺さんもさっきの事件を知って少し引いているのかもしれない。
「いや、ごめん。やっぱいいよ。」
普通に西園寺さんに誘われたのは嬉しいが、ここは仕方ない。でも、それは食い気味に否定された。
「なんでよ。食べに行こうよ。」
「あ、はい。」
そうして、俺と西園寺さんは教室を出て行った。
俺はどうやら相性の悪いお嬢様の幼馴染に8億円で購入されたみたいです。 @aaa00314
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。俺はどうやら相性の悪いお嬢様の幼馴染に8億円で購入されたみたいです。の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます