ライラがレグルスに入るまでのお話

@rairahura

村を出てからネルと仲良くなるまでの話

グリダニアに出てからカーラインカフェのミューヌの手伝いをするってことで置いてもらって数日 気づいたことがある

人は動きとか声色だけじゃなくて顔でもせわしなくコミュニケーションをとるようだ 怒ってる時は威嚇してる時と似たようなもんだけど嬉しい時とかは目を細くして口を曲げる 器用なもんだ ミューヌに聞いたら「笑う」とか「笑顔」とかいうらしい


ところであたしは今荷運び中 黒檀商店街から食材の箱をカーラインカフェまで運ばないといけない

箱を受け取るところまではすんなり進んだんだけど問題は帰り道で起こった


ここがどこかわからない


あっちこっちを見回しても似たような道に似たような建物で区別がつかない どれかがカーラインカフェなのかまだ着いてないのかもさっぱり

さてどうしたもんか その辺のやつに聞くしかないか?

唸ってると下の方から声が聞こえた


「ねえ あなた迷子?」


目をやると小さくて耳が横についてる...ララフェルって言ったっけ...の雌...か?見分けがつかないけど声が高いしそうだと思う

まあそういうのがいた あなたまいご?

ああ あたしが迷ってるかどうかってことか

「ああそうなんだ 困ってて」

「そうなんだ この辺りなら結構知ってるし わたしが案内してあげようか?」

「それは助かる」

「どこに行きたいの?」

「カーラインカフェってとこなんだけど」

「ああ それならわかるよ 着いてきて」


道すがらいろいろ話をした

そいつはネルって名前だとか 今はお仕事でグリダニアに滞在してるとか


「そうなんだ じゃあ本当にライラちゃんはグリダニアに出てきたばかりなんだね」

「そういうことになんのかな」

「もしわからないことなんかあったら何でも聞いてね?」

「わからないことばっかりだから世話になるかも」

「ふふ 任せて?わたしはライラちゃんより先輩なんだから」

と ネルは何が嬉しいのかあの笑顔ってやつをやってた


似たような道を通って進んで いつのまにか比較的見慣れた場所にたどり着く


「ここだよ!」

なるほどここか 道はなんとなくわかったしもう迷うことはないだろう

「ありがとな」

「いいのいいの こうやってライラちゃんと知り合えたんだから 今日は用事があるからまたね」

またね?別れの挨拶みたいだけど まあここはおんなじように返しておいた方が無難だろ

「ああ またね」

こうやってあたしはネルと知り合った 初めての友達ってやつだな


ネルはすごいやつみたいでカーラインカフェでもよく名前を聞いた 何々を倒したとかなんとかの争いを終わらせたとかとか 本人もよく忙しそうに走り回ってる

それでもネルは分身でもしてるんじゃないかってくらいしょっちゅうあたしに会いにきたしいっつも機嫌が良さそうだった

あたしは変わらず ちょっとした依頼を受けたり空を眺めたりして ネルが来るのを待ってた


「ライラちゃんて笑わないよね」

楽しそうにしてても とネルが言う

いつもと変わらないある日のことだった

やっぱりネルも気にはなってたみたいだ それは自分でも考えてたことだった

笑うってのは練習する必要があるってことだ 人は顔でコミュニケーションを取る 逆にいえばそれが出来なければ人の中でやってくのは難しい 特に良い感情を伝えられないのは致命的だろう

ネルならやり方を教えてくれるかな

「ああ やったことがなくて」

って言うと ネルは痛そうな顔をした 悲しんでる?笑うができないのはやっぱり問題みたいだ

だから教えてくれねーか?って頼むと ネルはいつも通り上手に笑って「いいよ」って答えた


「そうそれそれ 真似してもなんか違うんだよな」

「そうだなー 意識して笑ったことってないからちょっと難しいかも...うーん 目を細めて口の端を持ち上げてみて?」

言われた通りにする「どう?」

ネルは 初めて見るような表情をする 失敗みたいだ

「初めは上手くいかないものだよ わたしも頑張って教えるから一緒に頑張ろうね?」

そうやってそれから毎日 ネルが来ない日は一人で顔を水に映して 笑顔を練習した


そんで そこらのやつのちょっとした依頼をこなしたり なければ森で飯を採ったり ミューヌの手伝いをしたり 笑顔の練習をしたり ネルと話したり そんな感じで少しずつグリダニアに馴染んでいった と思う

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