マイクの供述
ダリルと出会ったのは、親に連れられていった教会だった。
親は敬虔なカソリックだったが、物心ついたばかりのおれにとって、礼拝は余り面白いものではなかったよ。有り体に言えば、退屈だった。だが、ダリルは違った。大人しかったけれど、退屈しているようには見えなかった。常に何かを考えているような、そんなガキだったよ。最初は、なんだこいつ、と思ったけれど、話してみると俺たちは、意外にウマが合った。同じ日本人の血が流れているからかもな。俺は祖父が、あいつは母親が日本人なんだよ。
知ってるかい? いじめって奴は、地球上どこにでもあるんだぜ。しかも、年齢は関係ない。
俺の両親は、聖書の教えとやらで暴力を極端に嫌っていたが、俺は負けず嫌いだったんだよ。だから、身体を鍛えていじめられたらやり返すようにしていた。そしたら、いつのまにか、いじめの矛先がダリルに集まるようになって、それを俺が守ってトラブルになる、ってのがパターンだったよ。ダリルはいつも俺に謝っていたけれど、俺にしてみれば、ダリルが俺の分も一緒にいじめられているようなもんだからな。
まぁ、ありふれた話だよ。
ありふれていなかったのは、ダリルの才能さ。あいつは、ホンモノの“
俺? 俺は、普通だよ。普通に喧嘩して、普通に親に反発して。親は教師にしたかったらしいが、結局フラフラして軍に辿り着いた。不思議なことに、水が合ったというのかな? 訓練はキツかったが、辞めたいとか逃げたいとは思わなかった。むしろ、親の干渉がなくなって、初めて自由を感じることができたよ。
俺が軍に入った後も、ダリルとの交流は続いたんだ。そんなに頻繁に連絡したわけじゃないがな。くちさがない奴らは、俺たちの関係をゲイっぽいとか言ってたが、そんなんじゃない。おっと、LGBTに偏見はないし、バカにもしていないよ。意外と軍の中にも多いんだよ、LGBTは。
俺たちの関係はそれとは違って……何て言うかな、あぁ、日本の言葉で“竹馬の友”って言うらしいな。
おっと、話が逸れたな。
そんな俺たちが、久しぶりに再会したのは、なんと“
部隊の規模? それは機密事項だし、話の筋には無関係だ。まぁ、これから話す内容も機密事項、ちょっとヤバい内容だ。それでも聞くかい? ……そうだろうな。
どこまで話したか……あぁ、ダリルと俺が再会したとこだな。
俺たちは旧交を温める間もなく、ホール3の調査に忙殺された。DIMOがどこまで公表しているかは知らないが、ホール3は、廃墟の世界だった。しかも、巨石文明だ。少なくとも、俺たちが見た範囲では、な。そこにいた住人は、身長は三メートル以上あったと推定されている。
そうさ、あんたが「ルート」と名付けた
あれは、調査が始まって半年くらい経った頃だったか、俺は本部で、ダリルは調査用専用車両で数キロ離れた遺跡の調査をしていた。その日、たまたまダリルはひとりで調査していたんだよ。本来は二人以上でなければならなかったんだが、そこは別のチームが既に調査済みだったし、無線でリアルタイム映像も贈られていたしな、そんなに心配はしていなかった。ちょうど俺も時間が空いていたので、ダリルと雑談したりしていたな。
あいつは、ダリルは遺跡にあった奇妙なモニュメントを気にしていた。以前の調査では電波も放射線も出ていなかったし、レーザー照射によるスキャンにも反応がなかった。ところが、ダリルは見つけちまったんだよ。モニュメントに隠されていたシンボルマークと、鍵を開けるための仕掛けを。そこで、止めるべきだった。
ダリルは『箱根細工だ』って言って、モニュメントの表面をいじりだした。俺は見ているだけだった。その途端、辺り一面が崩落した。
その後、救助隊が編成されて、もちろん俺が指揮を執って、ダリルが消えた遺跡周辺をくまなく探したよ。だが、崩落した穴の下は一面砂だらけ、ダリルもダリルが使っていた車両も、綺麗せっぱり影も形もなくなっていた。砂は少しずつ動いているらしく、流されていったと結論付けられた。俺は、流された先の追跡調査を進言したが、軍は認めなかった。それどころか調査団は縮小、ダリルの件は秘匿されちまった。
俺は、何もやる気が起きなくなって、ホール3から国に戻った。そんな時にDIMOが俺を拾ってくれて、<ハーキュリーズ>のインストラクターとして雇われたんだよ。軍でも<ハーキュリーズ>の原型みたい奴に関わっていたからな。
そろそろ分かっただろう?
そうだよ、
行方不明のダリルを探す糸口だ。あの機会を逃す訳にはいかなかったのさ。
これが、俺の動機だよ。
あぁ、どんな処分でも構わないよ。ただ、
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