孤独からの逸脱

朝の薄暗い闇を抜け出して、朝日に追いつこうと自転車を走らせる。もう少し、もう少しだ。空は青い、絵に描いたような晴天は僕の背中を押していく。もう少し、もう少しだ。陳列された閑静な自転車の群れ、自分の自転車をUSBメモリのように差し込んで、僅かに触れ合ったハンドル同士を眺めては見過ごす。急な階段を駆け下りると前方には君が立っていた。

「行こうか」

「いや、朝ごはんを買おうよ」

「いいのか」

「うん、1本遅いので行く」

まだ、人の少ない駅で自動販売機が静かに点灯している。硬貨を吸い込み飲み物を吐き出すと、それを掴み取り鞄の中へと押し込む。念には念をと色々と持ってきすぎたようだ。タクシー運転手はあくびをかいては眠気まなこをゴシゴシと擦っている。

広いイートインスペースのあるパン屋さんに入った。ソーセージパン、塩パンなどなど、色々なパンがそれぞれの枠ごとに並べられていて、何かを待っているようだった。

僕はソーセージパンと塩パンを手に取り、彼女はごまパンを手に取った。レジに向かうとお兄さんが慣れた手つきでトレーを受け取り、ビニール袋に放り込んだ。お店を出ると(気のせいかもしれないが)人気が増えている気がした。電車に乗り込むとそこからは1時間、右へ左へと微かに揺れながら走行をつづけた。途中、4人がけの席、ちょうど彼女の目の前にサラリーマン風の髪をわけた男が座った。覚えているのはそのくらい、あとは変わりばえのない景色が淡々と過ぎていった。

電車をおりるともう8時を過ぎていた。その街は空を一遍の曇りもない青で覆っていて、駅の両サイドには小洒落たカフェがあり、片方は2階へと続く螺旋階段があり、正方形の綺麗な絵が飾ってあって2階は何があるのか少しだけ気になった。でも、その時はその場を後にすることで満場一致した。駅の周辺はバスやタクシー、自家用車が頻りに往来していて、その道路を挟んだ向こう側の海は陽の光を受けてキラキラと揺らめいていた。僕らは少し歩いて、向こうの島へと行くフェリーに乗り込んだ、片道100円の船旅だ。学生が急いで乗り込んで来て、スマホを弄っていた。どうやらこのフェリーが通学手段らしい。何となく「いいね」なんて言いながら、フェリーの硬い椅子の上に腰掛けていた。エンジンが動き出すと細かな振動がお尻から背中にかけてやってくるもんだから、(少し恥ずかしい話だが)便意をもようした。この街に来てから思ってた事だが、空気がとても綺麗だ。そして、潮風はとても心地よかった!



2020年2月1日までの内容。そしてこれ以降はそこからおよそ6ヶ月後の話だ。

暗い部屋で1人、今も眠れないでいる。気づけば暗闇は薄明るくなりつつある。僕は笑う、孤独だ…と。

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休日 Lie街 @keionrenmaro

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