巨人、実は賢い説
人間にとって「おおきい」ということは、それだけで価値がある物だとされるように思います。
神話には必ずといっていいほど、見上げることもできないほどの神が出てきますし、巨大生物、巨大建築物、巨大ロボットなど、それは現代でも同様です。大きいということへの信奉は、変わらない価値観であるようです。
ファンタジーには巨人系のモンスターがいます。
その種類はモチーフの乏しさに対して多様であり、ただ大きいだけの人間という要素から、たくさんの種類が出ています。
各巨人系モンスターにはそれぞれ違った特徴があります。
牙が生えているだとか、一つ目だとか、怪力だとか、心優しいだとか、ドラゴンに対して圧倒的な力をもっているだとか、一口に巨人と言っても外見や特性は多様です。
・体の大きさと脳の大きさ
・巨大化の理由と特性
・巨人の生活
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・体の大きさと脳の大きさ
そんな巨人系モンスターの多くに共通した特徴が一つあります。それは知能が低いということです。モンスターでなければ英雄や神の一族として扱われるネフィリムという種族もありますが、少数派であることは間違いないでしょう。
おそらく体格だけが大きくなった脳筋タイプの定番キャラクター(という物語的な偏見)から発生したイメージだとは思うのですが、大柄な人と巨人ではスケールが違います。
巨大化は現実的に考えると、様々な工夫が必要になります。
例えば、身長の比に対して、面積なら二乗、体積なら三乗というのはよく言われることです。つまり、身長が2倍なら表面積は4倍、体積は8倍です。
想像上の巨大生物の考察にありがちな話としては、自重によって押しつぶされてしまうから直立できない、骨格がおかしいことになるという流れになるのですが、ファンタジーについて言えばドラゴンと同じく、魔法で何とかしているのでしょう。
しかし"脳みその容積は身長比の三乗になるはずなのに"という点については無視できないように思えます。
脳の大きさは種族の賢さを語る際によく用いられます。人類の進化の流れを見ても、完全二足歩行の利点欠点のなかに必ずと言っていいほど"脳の肥大化"という項目を目にします。
10メートルほどの巨人であれば、身長比はおよそ6、つまり脳の大きさは人間の200倍となるのです。
ではなぜ巨人は愚鈍であることが多いのか。これは一つの謎です。人間の容積の200倍の脳を持つと言われたら、ものすごく頭がよさそうに聞こえます。
もしかすると、完全に出自が違う生物なのかもしれません。または、「そういう生物だから」かもしれません。頭は人体で一番重いパーツですから、頭蓋骨が重くなりすぎないように脳の大きさもセーブされ、体の大きさに対して容積が小さいとしても別に不自然ではないのです。
まったく種族が違えば、比率で容積を推し量ることに意味はなくなります。
・巨大化の理由と特性
では巨人が巨大化した意味はどこにあるのでしょうか。
人間は人間サイズで不便なことはないでしょう。器用な指先と性能の良い脳みそをもっているのですから、すべての不便はそれによって解消することができます。
生物学的には巨大化することの一つの意味として、寒さ対策があります。
体積が三乗なのにたいして、表面積は二乗にとどまるわけなので、どんどん熱を奪われる地域においては巨体は有利に働きます。
温暖な気候にすむ東洋人よりも、北方の民族の方が体格がしっかりとしているという事にも例を見ることができます。
しかしファンタジー世界ではすべての巨人が寒冷地帯に住んでいるわけではないし、度を過ぎた巨体も説明が付かないでしょう。
巨大化する必要性としては、ウルトラマンという例があります。
つまり、巨大な敵と対峙する必要があったのかもしれないという事です。
ウルトラマンは格闘の他に人間には不可能な必殺技を繰り出します。それは巨大化した脳容積がなせる事かも知れません。
巨大な敵と戦わせるために何かしらの勢力が巨人という種族を生み出したのだとしたら、説得力があります。
しかしガンダムを始めとした巨大人型ロボットを現実的に考えてみるというある種の無粋な話の時は、巨大化したり人型である必要はないのではないかという意見が出てきます。
確かに機構の複雑さ、急所を前面に晒す人体が持つ構造的な欠陥、生産性が低そうに思える点など、ロボットであれば沢山の問題が出ることでしょう。
ロボットと巨人が違う点は、やはり脳みそに動作を頼るという点です。その点でみれば、複雑な演算を行い、高難易度な魔法を使うには、ある程度巨大化した脳が必要になるのかもしれません。
巨人は古代文明の技術者によってつくられたホムンクルスでありそれが野生化したという考え方は、こうしてみるならば妥当な気がします。
対災害、対モンスター用の決戦兵器として古代文明が作り出した種族だとしたら、彼等の巨大化にも必要性があったのではないかと考えられます。知能の低下も、適切な管理、適切なコントロールが成されなかった結果なのかもしれません。
・巨人の生活
巨人が農業をはじめとする、人間に準じた生産活動を取っている様子を見ることは稀です。狩猟といっても、せいぜいが手づかみで動物をむっしゃむっしゃやる程度でしょう。
それだけで到底必要なエネルギーや必要な居住環境を整えられるとは思えません。
彼等は魔人のように、世の中の物理法則から切り離された生物であるとも考えられます。
仮に生命活動を行い、人間と交流を図るとしたら、彼等にはどのような手段があるでしょうか。
土木工事に従事する巨人は、たまに見ることができます。圧倒的なパワーを生かして城壁を作り出すような巨人が、しばらく前に画期的な設定として流行した記憶があります。
ある程度生物学的特徴に沿った描写をするなら、圧倒的に頭が良く、力も強い、人間の上位互換っぽい種族な一方で、大量の食料やメンテナンスが必要という設定も可能なのではないでしょうか。
もちろん現実的に、学術的にファンタジーを見る必要などありはしません。
こういった話題は巨大ロボットに対して、お前はそのような形態をとる必要があるのかなどという突っ込みを入れるひねくれた中学生と同レベルです。
しかし脳容積も巨大化するという点をポジティブな方向に捉えれば、頭の良い巨人が生まれる余地も出てくるわけで、それは幸せなことではないかと思います。
脳筋のイメージが強い巨人ですが、その出自や身体的特徴を詳しく考えていくと、なんだか違ったモンスターになりそうです。
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