逃げ道
@madpigs225
終わり
「ホントはポルシェが欲しいんでしょ?」
友人の修に言ってはならないと思っているコトを言ってしまった。彼の空冷ビートルの助手席でいつも思っているコト。
「えっ?」
一瞬硬直した彼がようやく絞り出した言葉。たたみかけるように私は言葉をつぐ。
「買ってあげる、貴方が欲しいポルシェを」私は彼の反応を確かめずに前を睨む。
「どうして…?」
怯えるように聞いて来る。
さっきまで彼は新しく会社に配属されてきた女の子が気になるという話を楽しそうにしていた。
「貴方はいつもそうだから」
いつもいつも手に入るモノで妥協するから。
「タダじゃないケドね」
そこでようやく私は彼の方を向いた。
「いや、そもそも買ってもらわないから。ビートル好きだから」
強がり、目が泳いでるじゃない。
嘘じゃないけど本当でもない。
好きなのも事実、だけど妥協も事実。
「もう妥協しないで、私がポルシェを買ってあげる。そして私を助手席に乗せて、永遠に」
貴方が気になるのは新しく配属された女の子じゃないでしょ?
「決めて、貴方が本当に欲しかったポルシェを買ってあげる変わりに私と人生を歩んで」 じゃないと私はおばあちゃんになっちゃう。 もう、貴方の妥協に付き合う時間は私にないから。
「いいのか、俺で?」
まっすぐ聞いて来る。
「いいに決まってるじゃない。もう貴方が妥協するトコロを見たくないの。だから言って」
まっすぐ私も見返す。覚悟を決めたように修は大きく息をして
「俺と一緒に、ずっと、歩いていって下さい」
瞬間信号が青に変わる。RRのビートルが私たちの背中を蹴るように発信していく。
そうして私達は妥協をやめた。
逃げ道 @madpigs225
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