幸福な結婚

@madpigs225

正しい出会い

カッとなったポールがタブロイド紙でレディを殴った。そこにあったのが例えガラスの灰皿でもポールは同じ動作で同じスピードでレディを殴ったろう。だから事務所の禁煙は一定以上の成果を上げたと言える。何故なら重厚な作りの重々しい木製テーブルの天板には先週までタブロイド紙ではなく灰皿があったからだ。

もっともそこにタブロイド紙ではなく灰皿があり…もっと言えばよく分からない専門用語と芸術論を絡めておそらく1シリングの価値もない…この所のブックメーカーの予想のような…インタビュアーの話を聞く間中ポールが煙草を吸っていいならこの不幸は起きなかったのかもしれない。

激昂したポールはまったく手がつけられない。しかしレディも黙ってはいなかった。スコットランド訛りの早口でまくし立てながら煙草に火をつけようとするポールから右手でライターを取り上げ窓に投げつけ(不幸にもガラスは割れてしまった)左手で煙草を引っ手繰るとピンヒールのピンで(!)踏み潰した。

最後に煙草を踏み潰したヒールでポールの股間を蹴り上げてから事務所のやはり重厚で立て付けの悪い扉を強引に閉めてレディは帰った。

「決めた!」しばらくうずくまってからポールは叫んだ。彼はレディを追う。ポールはこの日禁煙と妻を決めた。我々事務所の意思に反して。ソワァーがため息を吐いた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

幸福な結婚 @madpigs225

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る