第3話 チートに罰を。


「なら、こんな話なら関係あるかな」

「どうせろくでもないだろうけど、聞いてやるよ」

「……そろそろっちゃわない? 勇者を、さ」



 突然にも、まったくカジュアルな口調でウサギはそう言い放ち、ボロ布を右手の指でつまんで、くるくると回し出す。

 そして、次の瞬間にはボロ布は真っ赤なハンカチに姿を変える。

 この一連のムダなマジックを見て、赤憑きはウザそうに右の眉を吊り上げた。

 自分で話しているくせに、自分の話に興味がないみたいな素ぶりが気に食わないのだ。

 それもこんな話を振っているくせして。



「あのな……お前自身が殺せないって言ったろーが」

「言ったよ。でも、君になら殺せるんだろ? そういう口ぶりだったぜ」

「どこが……だよ」

「“奴らだって不死身じゃない”。そう言い切れるのは、殺せるって言ってるみたいなもんだろ」

「……そうかよ。それで殺せるとして。誰を殺してほしいんだよ」

「それこそ言ったじゃないか。殺してほしいのは“勇者”だって」

「だから、どの勇者だよ。四大貴族の誰かなのか? それとも不適合者フェイラーズ? あるいは移植者パラスティクスとか?」

「どれも違う。勇者というのは本来、そういうまがい物を差す言葉じゃない……だろ?」

「おい、まさかお前……現役の勇者、のこと言ってんのか」



 勇者は3000年ごとに異世界から転生させられる。

 転生儀式は召喚した大精霊の力を借りて行われるため、大気と土に魔力が満ちるのを待たなければいけないからだ。

 その3000年に一度の一大イベントがちょうど10年前に執り行われ、その時に転生した勇者が今もこの国のどこかにいる。



「そう……影の勇者、ハジメ・イッサ。彼を殺してほしいって話」

「正気か……?」

「さぁてね。多分そうだと思うけど」

「はぁ? 思うだって……? 何だ、それ。待てよ……それ、誰からの依頼だ?」

「ごめん。素性は明かせないんだ。依頼人はおそとに出られない人だから」

「つまり、ヤバい依頼って意味だよな、それって」

「ぶっちゃけるとそうなるなぁ。で、どうするの? ブルっちゃったから受けない?」

「んな訳あるかよ。ボクはずっとその依頼を待ってたんだ」



 数年ほど前、勇者がある村を襲い、火を放ち、村の住民を根こそぎ殺した。

 財を奪い、悪逆の限りを尽くす勇者はただ最強チートであるために許された。

 ――そうであったに決まっている。



「だから……」

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