華子
KEN
華子
俺は明日結婚する。
相手は同じ職場の後輩で、未来という。気は強いが包容力のある良い子だ。俺には不釣り合いだと思うくらいの器量良しなのが、一番の自慢だ。
最初、母さんは結婚に反対した。上司の娘さんとお見合いして結婚した方が、将来の出世に良いと言う。政治的な側面でしか物事を考えられない母さんを根気強く説得し、渋々認めてもらった。俺は今、幸せだ。
そんな俺が今、かこへのメールを書いている。
俺は
俺は
三年経っても、
そんな時、未来が入社してきた。俺の一目惚れだった。
「他の女の子とご飯だったかな」
どきりとした。すぐさま電話をすると、
泣いていた。
「ごめん、こんな形で別れ話を切り出すつもりじゃなかったんだ」
咄嗟に出た言葉は、言い訳がましさと厚かましさしかなかった。開口一番、別れてほしいと言った方がいっそ清々しい。
「大丈夫。その方が皆幸せになれるんだものね。貴方が別れたいなら、別れよう」
――そんな訳があるはずない。自分で言うのも恥ずかしいが、
結局、別れ話はものの数分で決着した。その後連絡をとることはなかった。初めこそ面倒がなくて良いと思っていた俺だが、心のどこかには
誤解なきよう言っておきたい。未来はとても素敵で、非の打ち所がない女性だ。そしてそれは
心の迷いを断ち切るために、俺は未来との結婚を決意した。未来はもちろん喜んで承諾してくれた。結婚式の準備で、俺たちは幸せだった。
だが、未来との結婚を明日に控えた今になっても、俺は
どうせなら消す前に一文だけ送ろう、そう思い立ち、俺は
メールの第一文というのは、改まって書こうとするとなかなか書けない。まさか明日結婚するなんて言える訳がないし、さりとて何を書けば良いものか。
「久しぶり、今度飯でも食べないか?」
よりを戻したいと勘違いさせるな、これは。
「色々ごめんな」
今更謝られても困惑させるだけだろう。
「元気にしてるか?」
……これが一番無難な感じか。
文が決まれば後は打ち込むだけ。俺はポチッと送信した。過去に縛られているであろう女の元へ。
華子 KEN @KEN_pooh
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