京都純愛華
神羽源次
『京春恋華』
昭和から平成へ変わり、10年。
時は、1999年4月、京都市。
平成に変わってもなお、京都に春が訪れた。
俺は、木津零介。今年の春に高校に入学した。
京都の北山に1人で住んでいる。
今日は、高校の入学式である。
「ふぅ…、やっと終わった」
俺がため息をつき、そう言い放つと隣から
「そうだねぇ、私も疲れちゃった」
この子は、日下部雫。ショートヘアの陽気な女子。俺とは、幼稚園の頃からの幼馴染でとても仲が良い。
実は…俺は、雫の事が昔から好きなのである。
雫は、俺の事をどう思っているのだろう?
その事がずっと気になってならない。
入学式が終わった後、俺と雫はバスで京都駅へ向かった。
まだ、この時間は昼時で、国内外の観光客で賑わっていた。
通りは、桜のほのかな香りがしていた。
いつも通り、通り過ぎるバスは満員で、もうこの光景も地元人なら当たり前の事。
予定より、数分遅れてバスがやってきた。
やはり、バスの中は今日も混んでいた。駅に着くまで数十分かかるが、そう遠くはない。
すると、雫が笑顔を浮かべながら、こう言う
「ねえ、駅前のどこでにお茶する?」
そうだなぁ、駅前か…
「やっぱ、英國屋かな」
と、言うと雫は察した顔で
「やっぱり、言うと思った」
読まれたか…。さすがだなぁ。
まぁ、そこしか無いんだけどね。
「英國屋でいい?」
そう聞くと、納得した顔で
「いいよ、じゃあパフェ食べよーっと」
そうするか。まぁ、その後の事はまた、着いてから考えたら良い。
それから15分後、京都駅に着いた。
英國屋は、今居る八条口から反対の伊勢丹の中にのある。結構歩くが、慣れていてすぐに着いた。
店に着き、店員に席に案内された。
「何にする?」
そう聞くと、即決で
「パフェとアイスティーにする」
これは、ここに来た時の雫の定番メニューである。
「じゃあ、俺は、コーラで」
そう店員に言い、これからどこへ行くか話をした。
「今日は、どこに行くんだ?」
そう聞くと、雫は首を傾げて言った
「うーん、アニメイトくらいかなぁ。あとは、京都タワーとか?」
なるほどなぁ、ここへ来るとそうなるよなぁ。
「雫は、どっちに行きたいんだ?」
と、聞くと悩んだ顔をして言う
「うーん、どっちも行きたいなぁ」
「よし、今日は雫の行きたい場所に行こう!」
そう話をしながらお茶をし、店を出た。
とりあえず、八条口に戻り、アニメイトへ向かう。
アニメイトは、八条口の方で少しほど歩くが場所的には分かりやすい。
特に俺は、ここには用はないが雫がアニメグッズを買いたいらしく、立ち寄った。
それから40分後、次は京都タワーに向かう。
俺と雫はクリスマスの日に毎年ここに来ている。
京都タワーは、650円と少し高いがそれでも、京都の街並みを一望することが1つの価値である。
エレベーターで展望台へ登ると、夕方の京都の街並みが映し出されていた。
雫は目を輝かせながら、夕景を眺めていた。
雫は、指をさし俺に言う
「あっ!見て、御所が見える。ここから見えたんだね」
確かに、タワーから微かに御所を捉えることができる。見るのは毎回、夜だからまた違う形で景色が見える。
違うところから見ると、西に梅小路公園、東に清水寺、南は巨椋池方面、北に御所と二条城が見える。
夕方5時ごろ、俺と雫はタワーを降り、京都駅へ向かった。
今日は、本当に楽しかった。今までとは違う楽しさを味わえた。
雫が、こう聞いた
「今日、楽しかったね」
満足そうで良かった。俺も、満足している。
俺は
「雫が楽しんでくれて何よりだよ」
と、言うと雫は笑顔で
「ありがと、いつも付き添ってくれて」
と、言った。
俺は、その言葉を聞いて恥ずかしくなり、言葉を返せなかった。
帰りは、家までゆっくり地下鉄で帰ることにした。
駅に着き、切符を買いプラットホームで電車が来るのを待っていた。
俺は、何を思ったのか不意に、雫にこう聞いた
「雫ってさ、好きな人いるの?」
そう言うと、驚いた顔をしてこう言う
「えっ、い、いるわけないわよ」
慌てながら言う。…いないのか、そうか…
そんなことを考えている間に、電車が来た。
少し、気まずい空気になってしまった。
どうして聞いてしまったんだろう?
不思議な空気の中、俺は顔を合わせることもなく黙っていた。
そして、あっという間に北大路駅に着いた。
俺は、ここで降りなければならない。
雫は、一つ先の北山駅で降りるのだが、
このままの空気で終わってしまって良いのか?
いや、ここは正直に言うしかない。
俺は、電車から降り、少し躊躇い雫に言う。
「じっ、実は雫のことが前から好きだったんだ、
だから僕と付き合ってください」
思い切って言うと、雫が電車から飛び出て、俺を抱きしめた。
俺は、驚いた。これは、予想外である。
すると、抱きしめたまま雫がこう言う
「こちらこそ、よろしくお願いします」
まさかの行動が、予想外の展開を見せた。
いつの間にか電車は、行ってしまい、駅にいたのは2人だけだった。
それから、次の電車が来て、笑顔で雫が言う
「また、明日ね」
その表情には、数分前の雰囲気とは違い幼少期の頃の雫を見ているような、不思議な気持ちになった。
雫を乗せた電車は、駅を出発し俺1人がプラットホーム居るだけだった。
駅から出て、無意識にふと空を見上げると、青く澄んだ夜空に満月が輝いていた。
END
京都純愛華 神羽源次 @masami0621
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