第16話





シュリが学校を休んでいた事以外は本当にいつも通りの日だったの。


ただ、その日はハヤトがいつもより顔色が悪かった。


シンタロウやコトハは気づいていなかったかもしれないけど、絶対ハヤトは体調が悪いんだって確信してた。


だから昼休みに私はハヤトに「大丈夫?」って声をかけたの。


そしたら超小さい声で「アオイが…」って言ったわけ。」










…アオイってのはね、ハヤトのストーカー。

1つ下の学年の子で、本当にハヤトは困ってたの。


アオイは、入学してすぐの部活動紹介で1年生の前で軽音部の紹介をしたハヤトに一目惚れ。


でも、態度が冷たいハヤトをあえて部活動紹介に出した理由は新入部員は要らなかったから。


んまあ、イケメンだから何人か女の子は来たけど、私たちは全く歓迎しなかったからビビってみんな帰ってたのに、アオイだけは普通に部室に来て勝手に自己紹介までしたんだよ。





――――――――――…


「轟木アオイです!苗字は嫌いなのでアオイって呼んでください!…よろしくお願いします!」


うっわ〜勝手に入部する前提…


シュリがコトハに小さい声で「どうにかして」って耳打ちした。


その通りにコトハは「せっかく来てくれたけど、部員は募集してないの。部活動紹介は先生が出ろって言うから出ただけで…ごめんね」


と言い放った。


そしたらアオイは意外と潔く「わかりました!」って言って勢いよく部室を出て行った。



「やべえよ今の子!ハヤトモテモテ〜!フゥ〜〜〜!」


「…るせえシンタロウ。」


シンタロウはいつも通りハヤトを冷やかし、ハヤトはあんまり気にしていなかった。


でもその日から、ハヤトはアオイに悩まされ始めた。





「…最近、アオイさんと異常にすれ違うんだよな…」


「アオイさん?…あー。あの子?ハヤトのこと付けてるんじゃない〜?」


ケケケッと笑ったシュリ。


思えば、私たちは存在を忘れるレベルで会っていなかったのにハヤトは"異常"と言うくらいすれ違っていたってこと。



ある日。5人でいつも通り教室から部室に向かっていた時。


踊り場に置いてあった掃除ロッカーから何故かすっごく視線を感じたから、私は思わずロッカーを開けた。


そしたらその中にはアオイがいた。




「ヒッ!!!!!!」


背筋が凍るってまさにこの事。


アオイも


「ギャッ!!!!!」


と変な声を出していた。


「ギャッ!じゃないわよ!何してんの!?」


「あっ…う、あっ…ごめんなさい!!!」


アオイはそう言って逃げてしまった。


「ちょ!待ちなさいよ!!!!」


「もういいよハスナ。」


追いかけようとした私の肩を掴んだのはハヤト。


「なんとなく、気づいてたから。…ストーカー…ってやつ、かな」


コトハもシュリもシンタロウも私も先生に報告した方がいいって言ったけど


ハヤトは「アオイさんもすぐ飽きるよ。一時の気の迷いで怒られるのは可哀想。」の一点張り。


ハヤト…優しいけど…優しすぎるよ。


これでもしハヤトに何かあったら…なんて密かに心配してたな。




だからね、私はハヤトと部室で2人だった時に


「私、本当にハヤトのこと心配だよ…アオイのこと、先生に言おうよ…帰り道とかもついてきてたらどうすんの?」


なんて言った。そしたらハヤトは


「ありがとうハスナ。実を言うとアオイさん帰り道もつけてきてるんだよね。…大した家じゃないからバレたの恥ずかしいなあ、ハハ」


って笑った。


全然笑い事じゃない!


「それ、全然笑い事じゃないよ!?警察沙汰だよ!?」


「じゃあ、ハスナ俺と付き合ってよ。」


「……………………え?」


「ククク…そんな間抜けな顔すんなよ」


「えっえ、えっ!?ハヤトさん??自分が何言ってるか分かって―――――――」






ハヤトはその瞬間、私を引き寄せてキスをした。



高校2年生、初めてのキス。








あの後は、あんまり記憶が無い。






でも、私たちは付き合ったの。



今考えたら、本当に意味がわからないタイミングでの告白だったけど、正直嬉しかった。



イケメンで、人気があって、頭も良くて、優しいハヤトと付き合えるなんて。


見た目を気にする私にとっては最高の相手だった。



ただハヤトは、






「絶対にシュリとコトハとシンタロウには秘密」





って私に約束をさせた。

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誰のせい?〜高嶺の花が自殺した件について〜 鈴木あぽろ @su_zu_ki1234567

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