farewell
劣化したセロハンテープみたいに
眼鏡のレンズについた傷みたいに
それは
差し支える右と左
猛暑に浮遊する天秤
私が こう であることに
堪えられない
一秒ごと
この胸の裂け目に
あなたを突き落としたい と
ベッドの底で血潮がわだかまってる
増えた髪の毛
子どもの頃のタオルケットを覚えている足首
気持ちが暑くて
かゆくて
だからというわけじゃないが
(君をわかりたくない)
夜に宿る粘着質の時計が
苛立つくらい無気力に 針を落としている
そのうつろな喧騒に誘い出され
歯車の上を滑り 落ちる
私 ぐんじょう色の 穴
あーあ 轢殺音
血も肉も骨も 金属にへばりつく
私は空色の錆になる
そうまでしてようやく
肺に満ちるものに
どれだけの意味があるのか
(わかりたい、はやく)
眼鏡を新調したら
いつの間にか 君を思い出さなくなった
躰はあおく冷え
窓の外で 何か
切なく
うつくしいものが散らついていた
今なら 君の消えていった場所がわかる
蛍光灯の下の
ゆるやかに不快な
ひかり色の海の向こう側だ
詩集:墓守の唄 紅玉 @deepredtrain
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