老人の回想 蔦のその後

31 蔦 

 僕は、蔦莉の死から1ヶ月後、恋歌ラブソングを投稿し、活動を辞めた。

 蔦莉。僕は、君に元気をもらった。笑顔をもらった。だから、僕は歌を送る。届くといいな。僕の気持ち。



『永遠の恋』

咲き誇る梅 鶯の声が聴こえる

隣にいた君は ここにはもういない

あぁ 月が綺麗だ

想えば想うほど その言葉が言えなくて

好きだ 君に届かなくても僕は口ずさむ


ケンカしたこと 泣いたこと 笑ったこと

君と過ごした日々は 宝物

君との思い出は 宝物

あの時はさ

永遠とわのお別れになるとは思っていなかった

好きだ 君に届かなくても僕は口ずさむ


ねぇ 聴こえてるでしょ

もう1度 もう1度だけ 

君のこえが聴きたい

君の笑顔が見たい

好きだ でも もう君は隣にいない

好きだ 君に届かなくても僕は口ずさむ

ありがとう 僕の大切な初恋




 僕は、蔦莉にメールを送るつもりで、投稿ボタンを押した。君に送るこの歌。僕の大切な歌。

 蔦莉。君に逢えて、僕は幸せだ。ありがとう。


 僕は君のために歌ってきた。でも、もう君はいない。だから、僕は君の死を無駄なものにしない。だから、パーキンソン病について研究するんだ。そして、いつかパーキンソン病の謎を解明して、パーキンソン病で困っている人たちを助けるのだ。

「蔦莉。僕、頑張るよ。」

そう言って僕はシャープペンシルを取った。 僕は医学部に入学するために、受験勉強をしているのだ。

 これまで以上に必死に勉強した。


 試験当日は、蔦莉が「がんばれ」って言ってくれているようで、リラックスできた。




 無事合格した。


 その日の夜に見た星は、一段と輝いていた。

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