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リーク・ラック14歳

僕は今グリモア魔術学園にいる。

ここは貴族しか入学を許されない12年制の金持ち学校である。

生徒の数は約960人、僕は8年生になった。

この9㎢ある首都オリンの約4分の1を占めている。

当然の広さである。なぜなら、魔術は国の発展源であり、軍事力の要だからだ。

そんな魔術学校の中庭で僕はベンチの上で座りなりながら昼寝をしていた。

中庭の広さは1 2 3学年240人が余裕で入れるくらいで、噴水などが飾られていて、豪華な印象を持つ。

太陽の優しい光が中庭を照らし、風が僕を撫でる。ここは最高のお昼寝スポットだ。そして、僕の隣にいるのは僕の親友であるジュルド君だ。

え? なんで? 僕とジュルド君が一緒にいるんだって?

初めて会った翌日、実はジュルド君と会っていたのだ。ジュルド君と会ったその夜…

「明日、貴族の子が遊びに来るぞ!」

父さんはいつもよくしゃべるのだが、今日はいつもよりも張り切っていた。

「お前と同じ年だから、気が合うんじゃないか?」

するとお母さんも優しい笑みを浮かべながらこう言った。

「仲良くしてあげてね、リーク」

「うん、僕仲良くするよ」

とは言ったものの内心はというと

(誰だろう? どんな子なんだろ?仲良くなれなかったらどうしよう!!)

こんなことをずっと考えていたので、その日の夜は全然眠れなかった。

そして翌朝来たのがジュルド君である。

あのときのことは頭の中に鮮明に残っている。

僕は相手がジュルド君だったので、肩を降すことができた。

ジュルド君の方は相変わらず堂々としながら、

「よっ、また会ったな」

と言った。

「うん、思ったよりも早いけどね」

僕はクスクスと笑った。

「お前、それ言うなよ」

とジュルド君が少しムッとした顔をしながら言った。僕たち二人から笑いが漏れた。僕は一つ気になったことがあったので質問してみた。

「ジュルド君、口調変わったね」

ジュルド君はめんどくさそうにこう言った。

「ちげえよ、これが本当の口調だ。ほら、俺王子だから見栄はらないといけないんだよ」

「へー王子も大変だね」

僕はまたクスクス笑った。

「ほんと、俺もそう思う」

この日から僕たちはたくさん遊んだ。鬼ごっこをしたり、トランプで遊んだり、あと魔遊具でも遊んだっけ。ちなみに魔遊具というのは魔法のセンスを高めるために作られた子供向けのオモチャのことだ。そして、今現在に至っている。

「兄さ〜ん」

ふと声が聞こえた。紫色のショートの髪型をした少女が僕に声をかけてきた。

彼女の名前はメイラス・ラック。僕の自慢の妹で誠実で真面目な性格だが誰にでも優しい性格である。

「なんだい? メイ」

「兄さんがいたから声をかけただけよ。ジュルドさんこんにちは」

微笑んだ顔をしてそう言った。

「よう、メイちゃん元気してっか?」

「はい、元気ですよ」

そのあと少しだけ雑談をしたあと

「それじゃあ私は準備があるので」

そう言って彼女は僕らから離れていった。そのあとジュルド君が僕にこう話しかけてきた。

「妹って良いよな〜」

「妹なんていいもんじゃないよ」

僕は呆れながらそう言った。すると、ジュルド君は不敵な笑いを浮かべながらこう言った。

「へ〜そういいながら、お前妹欲情してねえだろうな? 」

「してないよ!」

僕はは顔真っ赤にしてそう答えた。ここで一つの疑問が浮かんだ。

「あれ? ジュルド君、お兄さんいなかったっけ? 」

確かお兄さんの名前はセルト・アーマメントという名前だと思った。するとジュルド君は目をそらしながら

「ああ…いるよ」

そう答えた。何やら僕は聞いてはいけないことを聞いてしまったらしい。するとジュルド君はこの話をなかったことにするかのように話題を変えた。

「それよりもさリーク。次の時間ってなんだ?」

「ええと…確か魔導書じゃなかったけ?」

この学校には魔術、魔法、魔導書、実施訓練、歴史のこの大きな5つの科目が存在する。

魔術というのは、体内にある魔力を放出する術のことである。

魔法というのは自然界にある木や花などが持っている魔力を放出させる法則のことである。

生きるものには必ず魔力が宿るとされ、それらのを法則に合った配置をすると迷いの森や毒の森などが生まれる。

この魔法を応用し、人工的に作り上げたのが魔法陣というものである。基本的に罠(トラップ)として使われる。

するとジュルド君はため息をつきながらこう言った。

「また魔術かよ…魔術…魔術…魔術…魔術ってこの学校は魔術関連のことしか勉強しないのか……」

「当たり前だよ。だってここ魔術学校だよ」

僕はジュルド君に対してもっともな正論を言った。しかし、ジュルド君はそれに反論するようにこう答えた。

「でもさ〜俺もっと魔術以外の勉強がしたいんだよな〜」

「じゃあ、なんで君はここにいるのさ……」

僕は呆れながらそう言った。魔術を学びたいからみんなここにいるっていうのにこの人は何を言っているのだろうか。ジュルド君はこれに対してこう答えた。

「いや〜ほら、やっぱりさ、王になる人間が国の発展源になっている魔術を学ばないっていうのは王の沽券に関わるからさ……」

「……」

「おいリーク! なんで俺をゴミみたいな目で見るんだよ!!」

当たり前だ。この国の支えである王様が形だけの沽券求めたらもう終わりだ!!

(ああ、この国マジでダメかもしれない…)

そんなことを真剣に考え始めた僕は頭を抱えている。

するとジュルド君は僕の気持ちを暗示したのか、胸をはりながらこう言ってきた。

「ふん、それなりの成績は取ってるんだから問題ねぇよ、過程なんかどうでもいいんだ。重要なのは結果だよ!! 結果!! 」

「まぁ、確かね…」

彼は確かにそれなりの結果を出している。この前なんか50問魔術単語テストを満点だったらしい。クソ! 僕は10問も失点したのに……と内心悔しくなっていた。

ジュルド君はまったく努力というものをしない。宿題なんて答えを写すのが当たり前だ。

僕は家に帰ったら最低でも2時間は勉強しているのに。これが才能の差というやつである。まったくもって残酷なことだ。才能の違いでこんなにも変わるとは。そろそろ僕の表情にも影響し始めてきたので、話の話題を変えることにした。

「ところでさ、ジュルド君…この前、実施訓練のテスト順位いくつだった? 」

ぎく…とジュルド君の肩が震えた。目が泳いでいて、顔を見ると汗でいっぱいである。

「お おいリーク、なんでそんなこと聞くんだ? 」

「え?単純に気になったからだよ、それとも言えない理由でもあるのかな? 」

僕は満遍の笑みを浮かべていた。しかし、その笑みは悪意がたっぷりとこめられている。

「いやいや、言う必要ねぇだろ! 」

「まさか、言えないの? 民に隠し事をするなんて信頼に欠けるよね」

僕はついにジュルド君にとどめを刺した。ジュルド君はうずくまりながら嘆いたあと、ため息をつきながらこう言った。

「最下位だ…」

「え…? 」

僕は驚きを隠せなかった。魔力放出のセンスが異常に無いのは知っていたが、これほどとは思わなかった。昔、魔遊具で遊んだときにジュルド君は一回も僕に勝てなかったからだ。僕は次にこう質問した。

「なんで? そんな結果になったの? 」

ジュルド君は深刻な顔しながらこう答えた。

「魔術が発動しなかったんだ…」

「……え?」

「スペルや魔力の割合、イメージだって良かったんだ。先生にも お手上げだ って言われたよ」

僕はこれを聞いてしばし考えた。ジュルド君がセンスが無いのは単に努力をしないからではないか? と。魔術放出のセンスはある程度は鍛えられると言われている。僕のすることといったら…

「ねぇ! ジュルド君! 僕が君のセンスを鍛えてあげるよ! 」

僕は勢いでベンチから立ってしまった。

「はぁ? お前話聞いてたのかよ… 俺はセンスがないって話したばっかだろ… 」

「だからこそだよ! 努力すればなんとかなるよ! センスが無いってことはまだ伸びしろがあるってことなんだんよ! 」

さっきまで才能の差を残酷だと思ってたのにも関わらず、こんなことを熱心に語った。

「だって、努力すればこの世にできないことなんて…」

「なんか熱心に語っておるの〜むさ苦しいにも程があるわ」

僕の熱意の入った言葉は最後まで言いきれず、ふと知らない声が入ってきた。声の方向を見ると、見知らぬ3人組が僕らが座っているベンチの前を通り過ぎていた。そして、真ん中にいる少年については見覚えがあった。

(あれは…確か…)

ジーク・ソードそれが彼の名前だ。上級貴族の人間である。貴族にも階級があり、大きく分けて上級貴族と下級貴族に分かれている。そのジーク・ソードを二人の少女が挟んでいる状態である。

「ほんと、下級貴族の分際で調子乗らないで欲しいですね」

こっちから見て手前の少女がそう言ってきた。

「キモイわー」

片方の少女がそれに便乗してくる。そして、ジーク・ソードがこう言ってきた。

「こんなところにいたら下級貴族の暑苦しさがうつってしまう。さっさと行くぞお前たち。」

「「は〜い」」

そういながら彼らは通り過ぎて行った。暫時、僕らは黙っていた。さっきまで心地良かった風が冷たく感じた。ジュルド君は背中をベンチにつけながらこう言った。


「チッ なんで上級貴族の奴らはああいうのしかいないだよ…」

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二つの禁書ーー空白のページ 縁の下 ワタル @wataru56

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