【偽書】瞬殺!ロケットランチャー仮面(二次創作)
結城藍人
第1話 瞬殺!不当判決!
「被告人を無罪とする」
裁判長の判決に、傍聴席から大きなどよめきが上がる。感嘆ではなく不審の声。被告人である電力会社の元経営陣は笑顔を見せたり、勝ち誇るような顔をしたりはせず、無表情のまま判決の理由を聞き続けている。そのような損になるようなことはしないのだ。
だが、傍聴席で聞いていた被害者の遺族は、とても冷静ではいられなかった。彼らの、彼女らの父が、母が、祖父が、祖母が、命を落としているのだ。
原子力発電所の事故で故郷を追われ、住み慣れない仮設住宅で健康を害して亡くなった方がいる。
健康的で安全な野菜を食卓に届けることを夢見て始めた有機無農薬栽培の農場が、原子炉から漏れ出した放射能で汚染されてしまったことに絶望して自殺してしまった人がいる。
原発事故の直接的な原因が空前未曾有の大天災によるものであったことは事実だ。
だが、その天災は専門家によって予想され、危険性が指摘されていたものだったことは、裁判の中で明らかにされていた。それなのに事故の対策を取っていなかったのは、過失ではないのか?
しかし、裁判長は言った。
「あらゆる可能性を考慮することが義務づけられれば原発の運転はおよそ不可能」
原子力発電とは、その「あらゆる可能性を考慮」しなければ使用できないような危険な動力源ではなかったのか!?
その「あらゆる可能性を考慮して」対策をとっているから「絶対安全」だと
これは経済性を安全性よりも優先するということを認めているのではないのか!?
それは……「金のためなら人を殺してもいい」と言うのと同じではないのか!?
そんな疑問と絶望が傍聴席を支配しかけた――そのとき。
「君たちが安全への
力強い男性の声が、法廷に響いた!
その場に現れたのは、巨大なロケットランチャーを肩に担いだ覆面の男!
「許すな! 逃がすな!
「喰らえ、開幕ロケットランチャー!!」
瞬殺!!
ロケットランチャー仮面の構えたロケットランチャーが火を噴き、営業利益の確保のために原発の安全対策を先送りにした電力会社の元経営陣が、それは過失にはならないと認めた裁判長が、一瞬にして爆発四散する!!
「これにて一件落着!」
原発事故の被害者の遺族たちを苦しめるものは最早何もなかった。呆然とする彼ら彼女らに見送られ、ロケットランチャー仮面は夕陽の中に去ってゆく。
弱者
【偽書】瞬殺!ロケットランチャー仮面(二次創作) 結城藍人 @aito-yu-ki
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