第21話 修行

「よし、お前を弟子に取ったからにはちゃんと修行をつけて強くしてやる。」


「はい、強くなりたいです。」


「今すぐやりたいとこだが、まだ依頼が終わってないからな。依頼を終えて一旦町に戻ってからでいいか?」


「はい、大丈夫です。」


「よし、討伐に行くぞ。ついてこい。」


そう言って走り出した。

もちろんテスタでもついてこれるようなスピードでだ。


いたな。


ヒュージタイガーを見つけ、咆哮を上げさせることも無く瞬殺した。


「ハァハァハァハァ、え!?瞬殺ですか!?」


「当たり前だろ。いずれはお前もできるようになるさ。」


「そ、そうですか。」


「よし、アルテに行くぞ。」


またアルテに向かって走り出した。


「また走るんですかぁ。」


「修行の一環だ。文句言うな。」


しばらく走ると門が見えてきた。


「お前身分証あるか?」


「ハァハァ、あ、えーと、持ってないです。」


持ってはいるが提示できないのだろう。


「仕方ない。お前は異空間に入ってろ。」


「え?それはどういう?」


俺は疑問に答えることなく異空間へテスタを収納した。


そして俺は門を通り、ギルドへ向かった。

ギルドはまだ昼の時間なので人は少ない。


「あら、ウィンくんおかえりなさい。」


「ただいま、ハルナさん。依頼完了です。」


そう言って慣れた手つきで完了手続きを終えた。


「あの、ハルナさんいいですか?」


「はい、なんでしょう。」


「4年ほどこの町に戻ってこないので申請をよろしくお願いします。」


「ほかの町に行っちゃうんですか?」


「まぁそんなところです。」


「寂しいですね。それでは手続きしますので、少々お待ちください。」


ギルドに1ヶ月以上顔を見せないと、死亡扱いになるため、1ヶ月以上町を離れる時は、こうやって手続きをしなければならない。


「はい、終了しました。早めに戻ってきてくださいね。」


「はい、ありがとうございました。」


そうしてギルドを出る。


「おう、小僧。また門を出るのか?」


あの門番に声をかけられる。


「あぁ、ちょっとな。しばらくここには戻ってこないからな。」


「そうか。早めに戻ってこいよ。」


「おう、またな。」


そう言って門を出る。


門を出て、しばらく行ったところでテスタを出す。


「いきなり何をするんですか!」


「すまんすまん、お前が町に入れないって言うから異空間へ収納したんだ。」


「それは僕が悪いですけど……。」


「修行は長引くからな。しばらく町に戻ってこれないが大丈夫か?」


「はい、町に未練はありません!」


「よし、じゃあ修行場所に向かう。ついてこい。」


そう言って俺は走り出した。

テスタも頑張ってついてくる。


修行場所はもちろん……


















「ハァハァハァハァ、ウィン様、ここは?」


見渡す限りの草原だ。

そして雲ひとつない快晴。

唯一見えるのは向こうにある火山くらいだろう。


「レタル草原だ。ドートミール王国の東の外れだ。」


「ハァハァ、随分遠くまで来たんですね。」


「あまり人に見られたくないからな。」


「ハァハァ、ここで一体なんの修行を?」


「お前にはまずあるスキルを与える。」


「それは一体?」


俺はニヤリと笑う。


「"自己複製"だ。」


「"自己複製"?ってそもそも人にスキルを与えられるんですか?」


「俺のスキルのおかげでな。与えると同時にお前の基礎能力も上がる。」


「さすがウィン様!すごいスキルですね。」


俺をおだてても木には登らんぞ。


「それじゃあ今からやる。近くにこい。」


「はい。」


近くに来たテスタの頭に手を置く。


"支配者"を発動。

テスタは光に包まれる。


「どうだ?終わったが。」


「えーと、あまり変化がわからないです。」


「自分のステータスを見てみろ。」


「分かりました。

ステータスオープン!」


テスタは自分のステータスをみている。


「どうだ?」


「確かにあります。"自己複製"ですよね。」


「そうだ。さっそく使ってみろ。」


「はい、やってみます。

ドッペルゲンガー!」


そう唱えると、テスタの目の前にもう1人のテスタが現れた。


「出来ました。」


「よく出来た。それは分身とはまた違う。自分と一寸たがわないものだ。魔力でてきている分身とは違い、肉体があり、記憶があり、人格がある。そしてオリジナルは存在しない。どちらもお前だ。それを忘れるな。」


「「はい、ウィン様。」」


「まぁ、時間が経てば自分の複製をいくらか操れるがな。今はお前には無理だ。」


「「なるほど。いつかできるようになります。」」


「頑張ればできるさ。じゃあ2人に命じる。お互いで戦い合え。」


「「2人でですか?」」


「そうだ。どちらもお前。よって戦いの相手は自分ということだ。己との戦い。それをしばらくやってもらう。」


「「なるほど。己との戦いですか。」」


「そう。俺がいいと言うまでだ。それが1ヶ月でも1年でもだ。」


「「分かりました。」」


「ひとつだけ言っておこう。勝ちにこだわるな。大切なことは勝つことではなく、己を見極め、自分の弱点や強みを見つけることだ。いいな?」


「「はい!分かりました。」」


「よし、双方構えて、始め!」



こうして俺とテスタの修行が始まった。

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最強への道 〜異世界で神になるまで〜 土沢天樹 @amaki5271

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