砂漠より

作者 戸松秋茄子

11

4人が評価しました

★で称える

レビューを書く

★★ Very Good!!


 カルト宗教の親に育てられ、学校でうまくコミュニケーションできなかった少年が、やがて孤独を望み、教師を憎み、殺人者に憧れ……
 最終的に自分自身も犯罪者になってしまった、という自叙伝。

 私は子供のころずっと学校でイジメを受けていましたし、自分は社会に適応できない異常な人間だという実感もあります。世界全体、人類全体への憎しみもあり、それが小説を書く原動力の一つです。
 だから、この小説を読めば共感できるんじゃないか、そこには自分の姿が描かれているんじゃないか。
 そう思って読みました。

 ところが、ぜんぜん私じゃないんですよ。
 主人公の思想も感性も、私と全然違って、「なんでそういう考えになるんだ?」と首を傾げっぱなしでした。
 
 特に、

 1、主人公は食べ物を食べるのが好きではない。食欲自体がほとんどない
 2、性欲もまったくなく、性的なことに激しい嫌悪感を持っている

 この二つがぜんぜん共感できない。
 食欲と性欲のない少年! そんなばかな。殺人よりも現実離れしている。

 自分には強い欲望がある、だからこそ、自分の肉体を支配している欲望が憎い。欲望に乗っ取られてしまう自分が嫌だ。
 欲望に流されてしまう普通の人間たちとは違うんだ、ああはなりたくない。
 それなら非常に共感できる。
 でも主人公は、そもそも欲望自体がなくて……
 だったら彼にとって「性」は「どうでもいいもの」になるんじゃないのか……?
 自分と無関係なものでしょう……? なんで嫌悪するの?
 このへんがすごくよくわからない……

 でも、主人公が抱えている焦りは、よくわかる。

 「友達なんていらない、でも一人でいるのも苦しいし、一人ではどこにも進めない」
 「学校を出たあと、社会に適応できる自信がなくて、少しでもモラトリアムを引き延ばしたい」
 
 わかるわかる。
 そして、小さな「つま… 続きを読む