そう考えるだけはある

「……来たみたいですね」


「だな…………エスエールさんが有望株って言うだけの力はありそうだな」


入り口から現れた虎人族のレグディス、鬼人族のフィーマ。

人族のヴェルデにエルフのファールナ、だったか?


面構えも良い感じ……かな?

ちょっと俺に対する怪しむ視線とかが零れてるけど、そうなる理由は解らなくもないから、今は一旦置いておこうかな。


「あんた達がラガスとその仲間、で合ってるか」


「そうですね。俺がこのパーティーのリーダー、ラガス。んで、こっちの鬼人族がシュラ。メイドがメリルで、こっちが俺のパートナーのセルシア。従魔のルーフェイスに関しては外で待ってもらってる」


こっちが一応四人、そちらも数は四人と同じだけど……負ける気一切なし! って雰囲気は全く崩れないな。


「ってな訳だから、早速模擬戦でもしましょうか」


「っ……初めてあって、いきなりか?」


「そっちの方が良いでしょ。レグディスさんたちもそれがお望みでしょうし」


「……ふっ。話は解る連中みてぇだな」


……俺らに対して嫉妬とか、見下ろそうとする視線を向けてくる心情は理解出来るけど、こう……こう、俺の方が上だけどな、みたいな言葉を堂々と発することが恥ずかしい、とは思わないのか?


いや、俺も覚えてないだけでちょいちょい使ってるか??


「それでは……誰からやります?」


「ラガスさん、まずは俺から一手も良いか?」


「それじゃ、こっちはまずシュラが戦るとして、そちらは?」


「あんたが出るなら、こっちはうちが出ようか」


同じ鬼人族のフィーマさんか。


確かに、フィーマさんからすれば一番負けたくない相手、なのかもな。


「では、最初の模擬戦はシュラとフィーマさんで行うとして、審判は……なくても良いですよね。判定はどちらかが負けを認めるか、もしくは気絶するか。これでいきましょう」


「おぅ、それで良いんじゃねぇの」


二人を残して俺たちはそこそこ離れる。


「女だからって、パワーじゃ負けないよ」


「俺も同じ鬼人族だ。弱ぇなんて思っちゃいない」


シュラの言う通り、俺も弱いとは思ってない。

身に付けている筋肉が、見せかけの筋肉じゃないのは視るだけで解る。


「んじゃ、適当に始めてくれ~~~」


審判がいないので、開始の合図もない。


後、真剣が駄目というルールもない。

終わった後にそこで云々かんぬん言われても面倒だからな。


「……あんた、武器を使わないタイプなのかい」


「いや、そういう訳ではない。ただ、体術でも戦えるってだけだ」


「ふ~~~~ん……乗ってやるよ」


あら、得物の大剣を離しちゃったな。


「シュラは…………横綱相撲、というのをやろうとしてるのでしょうか」


「? それなら同じ得物の大剣を使うと思うけどな。けど、単純に肉体の強さ、差を見せ付けようとしてるのであれば、確かに横綱相撲をしようとしてると言えるかもしれないな」


会話から察するのに、身体能力の差の中でも、パワーの差を見せ付けるつもりか?


「……っしゃあああああああ!!!!」


身体強化系のアビリティを使用した、気合の乗った良い拳だな。


「っ……ラガスさんに疑いの目を向けたくなる。それぐらいの強さは持ってるみたいだな」


「ぐっ!!!!」


「ぬぅあああああ!!!!!」


「なっ!!!???」


わぉ……放たれた右ストレートを片手で抑えて握って、そのまま上にぶん投げた。


「っ!! ……やるじゃないか」


「そういうのは模擬戦が終わってからで良い。さっきのが本気ではないだろ。惜しまず、全力で来い」


「余裕だね…………ぶっ潰す!!!!!!」


当たり前だけど、速攻で模擬戦だってこと忘れてるな。


シュラが速攻で挑発すれば、当然っちゃ当然なんだろうけど。


「……メリルは、全く心配してないみたいだな」


「パワーに関しては、私が絶対に敵わない分野です。相手も鬼人族の方であれば、その勝負から逃げることはないでしょう」


「つまり、シュラが負ける可能性は皆無だと」


「その通りです」


……やっぱ、メリルってなんだかんだでシュラの事認めてるよな……主人として、なんだかほっこりする。

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