黙っておくのが吉

「いよいよ今日ですね、ラガス坊ちゃま」


「そうだな。つっても、そんなに気合を入れるあれでもないけどな」


ハンターギルドにモンスターにとって美味過ぎる池の水に関してあれこれ報告してから数日後、クラン探求者のトップであるエスエールさんからパーティーを組んで共に行動してほしい面子たちが帰って来たという報告を受けた。


幸いにも、彼らが戻って来た日に偶然対面し、喧嘩勃発とはならずに済んだ。


「格の違いを解らせてやりましょう!!!」


「意気込むのは良いけどな、シュラ。こっちからは喧嘩売るなよ」


「うっす!!!!!」


「後な、多分俺たちの方が強いのは間違いないと思うけど、冒険者歴は向こうの方が上。一応先輩なんだ」


別に変にへりくだる必要はないけど、最低限のそういう気持ちぐらいは持っておかないとな……ぶっちゃけ、俺が自分よりも後にハンターになった後輩にいきなり馴れ馴れしく話しかけられたら、普通に嫌だし。


「…………なら、俺は向こうが失礼な事を言ってくるまで黙っておくっす」


「是非そうしてください、シュラ。その方が助かります」


「………………」


「なんですか、その眼は」


「いや、確かに俺よりは余計なこと言わないだろうけど、メリルってサラッと毒吐くしな~~って思ってな」


「……問題ありません」


いや、今のは絶対に問題がある間だろ。


「メリル~~~~」


「安心してください。私から毒……眼を逸らしてはいけない事実を吐くことはありません」


自分で毒って言っちゃてるじゃないですか。


「私は、何も、言わない」


「おっけ~」


セルシアならちょっと毒を吐いても、いきなり面倒な展開にはならないと思うけど……って思うのは油断大敵か。


「っし、そろそろ出発するか?」


「? ラガス坊ちゃま、集合する時間までまだそれなりに間がありますが」


「一応俺たちが守る側なんだ。先にギルドに着いてないと、初っ端からごちゃごちゃ言われそうだろ」


「なるほど。それもそうですね」


なんでこっちがここまで気を遣わなきゃいけないんだって思いは多少あるけど、喧嘩しないに越したことはないからな。


「多分っすけど、これから会う奴らはそういうラガスさんの優しさ? を全く解ってないんでしょうね」


「上から期待されてるルーキーってことは、多分二十歳は越えてないだろ。俺が言うのはおかしいんだろうけど、若い奴らは普通、そこまで考えられないものだろ」


一応最初から差を解らせるつもりだし、長期的にイライラすることは多分ないだろ。


頭の中であれこれパターンを考えながら移動し、ギルドの訓練場にとうちゃく。当たり前だが三十分以上も前だから、有望株たちもまだ来てない。


「ところで、ラガス坊ちゃま。探求者の有望株たちと組んで探索を始めた場合、どこまで探索して良いのでしょうか」


「……あんまり気にしなくて良いんじゃないか?」


「一応預かるわけですので、そういうわけにはいかないかと」


「でも、俺たちにルーフェイスがいるだろ。まずそれだけで超安心だろ」


単純な戦闘力だけなら、強力なモンスターが表れても……二体から三体までなら、多分なんとかなる。

四体とか五体まで増えると、周りを気にして戦ってはいられないかな。


「雰囲気があまり良くない、変な不気味さを感じるようになったら、俺もルーフェイスと一緒に索敵に回る。そうすれば奇襲を受けてもなんとかなるだろ」


「そう、ですね。少しラガス坊ちゃまの索敵力を侮っていました」


「気にしてないよ。ルーフェイスが傍にいると、そういう部分はついついルーフェイスに頼りたくなっちゃうからな。後、今探索している場所は未開拓の地ではあるけど、ダンジョンではないんだ。うっかり少し距離を取りながら行動してたら、いつのまに転移トラップに引っ掛かって消えてたり、落とし穴に落ちてたとかはない」


「……あの魔宮、魔窟に考えれば、そういった部分に関してはそこまで気を張らなくても良い、と」


「そういう事だ」


探求者の有望株たちも、未開拓地がどれほど恐ろしい場所かは解ってるだろうし、変な行動はしないだろ……多分。



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新年から新作、異世界バーテンダー。冒険者が副業で、バーテンダーが本業ですので、お間違いなく。の投稿を始めます!!


カクテル、料理、バトルありの冒険譚です!!! 読んでもらえると嬉しいです!!

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