そこまで鬼じゃない

「お、らッ!!!!!」


「せい」


前衛組の動きの質は……元気なだけじゃなくて、ちゃんと動けてるみたいだな。

とはいえ、バカデカいボーンナイトの剣技も悪くない。


てか……体格差的に、腕力に関しては向こうの方が上っぽいな。


「ラガス坊ちゃま、シュラは……大丈夫、でしょうか」


「心配か?」


「あのサイズ、身体能力を持つ相手となれば、心配にもなります」


「ふふ、それもそうか」


ちょっとからかおうかと思ったけど、どうやら無駄だったな。


「あの斬撃をまともに食らえば、シュラでも吹っ飛ばされるだろうな。でも、それはシュラも解ってるみたいだ」


火属性の大剣に鬼火を纏い、闇を纏うボーンナイトの剣に対抗してるが、真っ向から斬り合うことは避けてる。


回避不可能と思えば、直ぐに弾いて軌道を逸らすことに集中して対応してる。

それに、シュラの攻撃は必殺の一撃にはなっていないが、それでもダメージは与えられてる。


スピードに関してはシュラの方が上回ってるから、よっぽど大きなミスをしない限りは、大丈夫だろう。


「どちらかといえば、ボーンナイトと戦ってるシュラよりも、ボーンドラゴンと戦ってるセルシアの方が、厳しい相手では、あるかもな」


どんな理屈で空を飛んでるのか解らないけど、パワーに関してはシュラよりも負けてる。

一撃のダメージ量ならそこまで差はないと思うけど、強力な一撃を食らったら、シュラなら耐えるだろうけど、セルシアの防御力を考えると……ヤバい。


「セルシア様の方のサポートを優先した方が、良いということですね」


「そういう事だな。まぁ、セルシアが紫電崩牙を抜剣すれば話は別なんだが……多分、抜かないよな」


「そうですね……キリアから頼まれてる私としては抜剣してほしいのですが」


セルシアの気持ちは正直解らなくはない。

あれを抜けば、マジで勝負が終わる。


素早さでは負けてないから、攻撃を当てるのはそう難しくない筈。

そうなってくると……うん、紫電崩牙の切れ味を考えると、たった一斬りで終わってしまってもおかしくない。


「なぁ、メリル。このボーナスステージ? に関しては、別に訓練には入ってないんだよな」


「私としては想定してなかったシチュエーションですので……でも、おそらく使ってくるであろうキメラが相手ということを考えれば、もしかしたら丁度良い相手、なのかもしれませんね」


「あぁ~~~、そういえばそうだな。すっかりその存在を忘れてた」


うっかりしてたな。

あのクソマッドサイエンティストが繋がってた国と戦争になった場合、相手をするのは人間だけじゃない。


「骨だけのドラゴンに、おそらく巨人族より大きいであろう骨の剣士……そういう部分だけ見ると、キメラに思えなくもないな」


「そういう事です。あのタコキメラはBランク程の実力がありましたが、あのレベルのキメラはそう簡単に造られないでしょう」


「つまり、二体か三体ぐらいをセットで、俺たちや他の実力者たちの元に送られてくる可能性が高いってことか」


「私の予想ではありますが」


十分な予想だ。


でも、場合によってはAランククラスのキメラが現れることも考慮しとかないとな。


「……ラガス坊ちゃま、どうやら私たちがそこまで心配する必要は、なかったようですね」


「みたいだな。まだ戦いが始まってから……数分ぐらいか? それを考えると、大分敵の動きを把握するのが早くなってきたな」


総合的なステータスでは巨大な骨剣士とスカスカ骨ドラゴンが上だったみたいだけど、あんまり小細工やブラフを細かく使える頭は、なかったみたいだな。


動きを読めるようになれば、同じ個所に攻撃を繰り返して、大胆に骨をぶった斬るのも不可能ではない。

これであの二体が再生系のアビリティを持ってたら話は別だっただろうけど、さすがにそこまでダンジョンも鬼じゃなかったってことだな。

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