横取り?

寄り道が決定。

翌日から陸鮫に付いて情報を集めようと思ったんだけど……どうやら、勝手に動くわけにはいかないみたいだった。


「当然と言えば当然ですね」


「メリル……追い打ちしないでくれよぉ~」


「事実を口にしただけです」


相変わらず厳しいメイドさんだ。


つっても、メリルの言う通り……当然っちゃ当然か。


「ラガスさん、別に俺たちだけでもやれるっすよね」


「陸鮫がどれだけの奴らを従えてるのかは知らないけど、こっちにはルーフェイスがいるし、万が一は起こらないだろうな」


こういった考えが油断に繋がりそうだけど、ぶっちゃけ事実だと思ってる。

ただ、現実的な問題として、俺たちが個人的に解決しちゃならねぇんだよな。


「シュラ、私たちはむやみやたらに同業者へ喧嘩を売りたい訳ではないのですよ」


「メリル……お前、この前俺たちが他の連中と衝突しないのは不可避とか言ってなかったか」


「それはそれ、これはこれという話です。どこかで衝突することは避けられないでしょうが、だからといって特に問題が起こってない状態で喧嘩を売るのはダメに決まってるでしょう」


そうなんだよな~。

なるべく他のハンターとは仲良くしたいし……まっ、個人的には陸鮫だけでも俺たちだけで狩れれば問題無い。


「ん~~~……別に俺たちだけで陸鮫と他のモンスターを狩ったところで、他の連中が被害を被りはしないだろ」


「確かに被害は出ないでしょう。しかし、既にギルドが多くのハンターたちを集めて、陸鮫たちを討伐する方向に動いています」


一番最初に陸鮫を発見したのが俺たちなら、また話は別だったんだけどな~。


「そこで私たちだけで陸鮫とその他のモンスターを討伐すれば、他のハンターたちが功績を上げる機会を奪うことになります」


「…………その功績だけそいつらに譲るってことは出来ねぇのか」


「シュラ、さすがにそんなバカな考えが通らないことぐらい解ってるでしょ」


「ちっ! はぁ~~~……しょうがないって話か」


残念ながら、そういう話だ。


Bランクの中でも珍しく、尚且つ強いモンスターが率いる軍団と戦ったことがあるって内容は、十分ランクアップに繋がる功績だろう。


それを奪ったとなれば、現在作戦に参加するハンターたちだけじゃなくて、他のハンターたちにも煙たがられる。


「納得してくれたようでなにより。そういう訳だから、あまり勝手な真似はしない様に」


「へいへい、解ったよ。でも、そいつらラガスさんに絡んできた時は、ぶっ潰しても良いのか?」


「その時は遠慮なく、思いっきりぶっ潰しなさい」


おい待て! そこはしっかり止めてくれよ!!!


はぁ~~、結局色々心配な流れになったな~。

とりあえず翌日にはギルドで討伐作戦に参加する意思を伝えた。


俺たちがまだエメラルドランクだったため、一瞬だけ怪訝な表情を向けられたが、どうやら俺たちの過去の情報屋やハンターになってからの情報は伝わってるらしく、あっさりとオッケーを貰った。


「それでは、明日の午後から始まる会議に参加してください」


「分かりました」


一応規模がそれなりに大きい討伐だから、そういうのがあってもおかしくない。

総合的な戦力に関してはファイルトロールとトロールの集団の方が上かもしれないけど、どうやら数は今回陸鮫が率いる集団の方が多いらしいからな。



「ラガス、元気、ない?」


その日の昼食時、あっさりとセルシアに元気のなさを見抜かれた。


「バレたか」


「原因は翌日の作戦会議ですか?」


「それ以外にあると思うか?」


俺たちから喧嘩を売るつもりはないんだけどな。


「向こうから喧嘩売ってきたら、ぶっ潰して良いんですよね」


「……討伐戦に支障が出ない程度にしてくれよ」


「うっす!!!」


嫌な未来しか想像出来ないけど……仕方ないって諦めるしかなさそうだな。

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