嫌な生まれ変わり
「という訳で、これからオルト―へ向かうのが良いでしょう」
俺らが良さげな情報を集める前に、たった一日で今後役立ちそうなダンジョンの情報収集を終えたらしい。
「そこに墓地という名のダンジョンがあります」
「墓地って……いや、ダンジョンはハンターたちの墓場とは言うけどさ」
「仕入れた情報によると、墓地で死んだ冒険者は再利用されるらしいです」
再利用……言葉だけなら良い内容なんだけど、内容が内容なだけに、恐ろしさしか感じない利用方法だな。
「故に、対人戦でも有意義な経験が得られるでしょう」
「間違ってはいないな。でも、そんな恐ろしいダンジョンなら、あまりハンターたちは潜らないんじゃないか?」
「既に発見され、ハンターギルドが管理を始めてから数十年は経過しています……だからこそ、墓地へと向かうハンターは多いらしいですよ」
「そういう事か」
先輩や後輩、同期たちが死後も彷徨わないように、成仏させに行くってことか。
その行動理由は解るんだが……絶対に中には成仏させに行こうとしたら連中が、仲間入りしてるケースもあるよな。
「ゾンビ、もしくはスケルトンの仲間入りしたら……あれか、スピードは上がるけどパワーが下がるって感じか?」
「それは個体差によるらしいです。強いハンター、戦闘者たちは骨まで強靭ということなのでしょう」
「なるほどねぇ。そりゃ人間からモンスターになったんなら、その辺の事情が変わっててもおかしくねぇか」
……そうか、そうなるんだな。
一度ダンジョンに取り込まれたなら、モンスターとして生まれ変わっててもおかしくない。
「その通り。元ハンターと思わしきモンスターには、魔核があります」
「そうか…………同じハンターが救ってやりたいと思う訳だな」
別にそこら辺の悔しさをどうにかしようとか、救済のつもりはない。
とにかく、良い訓練の場にはなりそうだ。
「それでは、次の目的地はオルト―でよろしいでしょうか」
「あぁ、そうしよう」
一日で次の目的地が決定。
翌日の朝からホープレスを出発。
道中は……比較的良好。
モンスターはルーフェイスにビビッて襲ってくることはなかったが、二度盗賊に襲われた。
「ルーフェイスみたいな怪物がいるってのに、あんたら度胸だけはあるな」
「だ、黙れええええええええっ!!!!」
良い歳したおっさんや若い連中など関係無く潰し、ルーフェイスの鼻を頼りにアジトを突き止める。
俺たちを襲おうと決心した盗賊団は……色んな意味で運がなかったとしか言えないな。
実行犯だけで襲っても俺たちを殺せる、もしくは捕らえられる訳がない。
加えて、俺たちに近づけば結果としてルーフェイスが絶対にアジトを突き止める。
そんな多少の襲撃はありながらも、目的地であるオルト―には順調に進んでいた。
ただ……途中、偶々良いタイミングで泊まることが出来た街、ハサンで面白い情報を耳にした。
「やっぱり、あいつを倒してからでもオルト―に行くのは遅くないと思うんだよ」
「俺はラガスさんに賛成だな!!!」
「シュラ、あなたは黙っててください」
宿の食堂で実に面白い話を聞いてしまった。
ハサン周辺の森で陸を歩く鮫……その言葉通り、陸鮫が生息してるらしい。
これまでにもその姿は目撃されており、討伐もされてるので、決して幻のモンスターとか、そういう存在ではない。
ただ……陸鮫のフカヒレは、超美味いんだよ!!!!!
「ラガス坊ちゃま、忘れたのですか。いずれ訪れるかもしれない戦争に備えて、私たちは経験を積む。それが目的です」
「そうだな。確かにそれが目的だった。でもな、メリル……いずれ訪れるかもしれないという理由で、ずっとオルト―に留まりはしないんだぞ」
「むっ」
どうやらこれが決め手になったようで、俺たちはほんの少しの間だけハサンに滞在することが決まった。
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