適した相手たち

「そうだな。今後数年……いや、十年ぐらいは何処に行っても面倒が起きそうだ」


「解ってくれてなによりです」


……十年も経てば問題が起きなくなると信じたいんだけど、ぶっちゃけそれも怪しいよな。


「それで、どこを攻略しに行きますか?」


「……正直まだ早いとは思うが、候補を上げるなら……主に人型のモンスターが出現するダンジョンが好ましいな」


「戦争でぶつかるかもしれない連中を見立てるってことっすね」


「そういうことだ」


あの屑マッドサイエンティストのせいで合成キメラも戦場に登場する可能性が高いが、それでもメインで戦うのは人だろう。


そうなれば、まずは大量の人型モンスターとの戦闘に慣れておいた方が良い。


「人、方……ゾンビ、とか、ボーンナイトとかリビングデット、とか?」


「そうだな。そこら辺のモンスターが丁度良い。そういったモンスターたちを束ねる奴もいるだろうから、戦争時の戦場を体験するには最適な筈だ」


訓練自体は集団タイプの模擬戦で出来るかもしれないけど、どう頑張っても緊張感が足りなくなる。

基本的に死者は生き返らせられない。


中々にチートなアビリティを持ってる俺でも、それは出来ない・


「ゾンビ、ボーンナイトやリビングデットが多くいるダンジョンですね……分かりました。明日からそれらの情報について収集を始めます」


「頼んだ」


メリルが担当してくれるなら……俺は俺で別の情報を集めておいてた方が良さそうだな。


そもそもこのガルガント王国に、俺たちが今体験したい環境のダンジョンがあるとは限らない。

別の国に行くという手段もあるけど、その間に戦争が起こるのは困る。

まっ、ルーフェイスに頼れば一日以内に戻ってこれそうだけどな。


でも……やっぱり怖いものはある。


という訳で、前回と同じく面白そうな獲物がいないか探す。



「ラガスさん、メリルを一人にしても良いんすか?」


「傍にルーフェイスがいるだろ。バカ絡んだとしても、メリルが何とかする前にルーフェイスがなんとかしちまうだろ」


「っと、それもそうでしたね……ぶっちゃけ、待遇的には侯爵家……いや、セルシア様と同じ公爵家クラスの護衛レベルっすね」


「護衛が従魔とは言えモンスターってのはあれかもしれないけど、感知力と戦闘力に関しては超一流だからな」


あまり邪魔にならない様に体は小さくしてるけど、パワーとスピードがしょぼくなった訳じゃない。

まさにゴブリンの皮を被ったドラゴンだからな。


「ラガス。次は、どんな敵と、戦う?」


「……個人的には、Bランクのモンスター複数。もしくは、Aランクのモンスターだな」


「おぉ~~、それは超超超楽しそうっすね……でも、メリルの奴が許しますか? というか、Bランクのモンスターはともかく、Aランクのモンスターに挑むのは……ロウレット公爵家が許しますか?」


「それは…………セルシア、どうなんだ?」


別に問題無いだろと言いかけたが、よくよく考えれば別に問題無いことないよな。


二年ぐらい前の話ではあるが、三本角のオーガと戦った時、かなりガチで戦ったからこそ勝てた。

上等なカードを切らずに勝てる相手じゃないんだよな~~。


確かにBランクモンスターであるトロールをセルシはソロで倒した。

でも……それは紫電崩牙があっての結果だ。

紫電崩牙がなければ絶対に勝てないなんて言わないが、それでも命懸けの戦いになるのは間違いない。


「問題無い、と思う、よ」


「ほ、本当か?」


セルシアに何かあって、ロウレット公爵がブチ切れたら……俺も初めて会った時から成長してるけど、正直勝てるかどうか怪しい気がする。


ルールがある試合ならなんだかんだで有利かもしれないけど、命懸けの戦いになると……本当に考えるだけで恐ろしい。

まぁ……娘であるセルシアがそう言うなら、何かあっても問題無いと信じよう。

勿論、何か起こらない様に努力はするけど。

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