当然、参加する

国から特別報酬金も貰い、万々歳……とはいかない空気が部屋に流れていた。


「ラガス坊ちゃま」


「なんだ?」


「もし……仮にゲーデルガンブ帝国との戦争が起きれば、ラガス坊ちゃまは参加するのですか?」


おいおい、それはあまりにも愚問過ぎるだろ。


「参加するに決まってるだろ。寧ろ、それ以外の選択肢があると思ってるのか?」


「……戦争ですよ」


「戦争の真似事なら、いつもやってるだろ」


戦争とは、結局は命懸けのバトル。

それなら子供の頃から何度も行ってる。

クソ厄介な件だとは思うけど、今更ビビることはない。


「本当に戦争になれば、四方八方から攻められる戦いが続きます」


「……スタミナの心配か? 普段からトレーニングを欠かさず行ってるんだから、そこまで心配しなくても大丈夫だっての」


「そうですか……では、罪なき人を殺す覚悟はありますか」


問いたかったのは、そっちがメインか。


「それはれじゃねぇか。メリルやシュラも同じだろ」


「私はラガス坊ちゃまのメイドです。ラガス坊ちゃまを守る為であれば、相手が罪なき者であっても手にかける覚悟はとっくに出来ています」


「俺も同じ心構えっすね。戦争に駆り出された連中にはほんの少し申し訳ないって思うっすけど、実際に始まれば容赦なく粉砕させてもらうっすよ」


……本当に、相変わらず頼もしい従者たちだな。


「そうか。俺としても、心構えはお前たちと似た様なもんだ。従者に守られるだけの主人なんて、クソダサいだろ……お前らに何があったら、それこそ俺は一生後悔する」


二人を脅してる訳じゃない。

本当に戦争が起こって参加することになれば、間違いなく二人と一緒に参加する。


普段の冒険でもそうだが、そういう間違いが起こって欲しくないからこそ、色々と備えてる。


「ねぇ、戦争、なら、思いっき、り使っても良い、よね」


「ん? 紫電崩牙のことか?」


「うん」


「そりゃ戦争だからな。生き残るために最強の手札を使わないなんて、バカのすることだ。存分に使ってくれ」


セルシアが全力で紫電崩牙の刃を振るえば、一卒兵程度じゃ百人束になっても勝てないだろう。


「ラガス坊ちゃま、仮にセルシア様も戦争に参加するのであれば、何度か紫電崩牙を全力で振るう機会を体験した方がよろしいかと」


「それもそうだな。俺たち相手でも……出来ないことはないと思うけど、ちょっとリスクがあるよな」


やるなら、がっちり強化アビリティを使用した状態で臨まないと、普通に指や腕、足が切れる。


ていうか……紫電崩牙から繰り出される斬撃や刺突に限れば、竜魔法の強化魔法を使ったとしても、うっかり重要な器官が貫かれたり……最悪死ぬかもしれない。


「やはり、今回の様に強いモンスターの存在を探し、セルシア様がそのモンスターの相手をするしかなさそうですね」


「…………いや、わざわざ面倒な情報を集める必要はないだろ」


「というと?」


「攻略難易度が高めなダンジョンに向かえば。ダンジョンであればいくらでもモンスターが湧いてくる。紫電崩牙の全力使用に慣れるだけじゃなく、戦時に近い体験も出来る」


ぶっちゃけ、ダンジョン探索を行うのは、もっと後にしようと思ってた。

別に早い段階で行っても良いという……実は楽しみに思ってるから、寧ろ今すぐダンジョン探索に向かっても良い。


ただ、まだハンターになって一か月経つか経たないか……その街で生まれた人間ならともかく、経歴に関してまだまだ小童な俺たちが向かえば……喧嘩に発展するのは眼に見えてる。


「ラガス坊ちゃま、今私たちがダンジョン探索に向かえば、必ず問題が起こると考えていませんか?」


「……顔に出てたか?」


「俺にも分かるぐらい顔に出てたっすよ」


つまり、がっつり出てたってことだな。


「私たちはハンターになって直ぐ、ファイルトロール率いるトロールの群れを討伐しようと行動しました。その時点で、もうこれから先そういったことで悩むのは無駄かと」


…………はい、仰る通りです。

メリルさんの言う通りです、変に考え過ぎてた俺が馬鹿でした。

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