確定ではない

「……ラガス君。この先……戦争が起こると思うかい」


…………思った事を、そのまま伝えれば良いよな。


「正直、可能性として一割とかそれ以下……そんな話ではないと思います」


「そうだよな。こいつが造っていたキメラの情報が全て向こうに渡っていなかったとしても、いずれ質の高い……極めて厄介なキメラを造り出す」


「あの、バカなことを言ってる自覚はあります。それでも……思わずにはいられません。交渉の場で向こうがその気を示す姿勢で来るならば、こちらも受けて立てば良いのではと」


「今のうちに潰せるなら潰してしまうということか……私としては、君をバカだとは思わない。私も……出来ることなら、今すぐ叩き潰したいよ」


俺と同じか……それは嬉しい。

嬉しいんだが、現実的に考えて多分無理なんだよな。


今回の一件についてのらりくらりと躱されるだろう。

でも、その間に向こうは着々と他国を潰す為のキメラを製造する筈。


もしかしたら別の形で使われるのかもしれないけど、何にしろ……いつ、ガルガント王国に戦争を仕掛けてきてもおかしくない。


「なぁ、ラガスさん」


「なんだ、シュラ?」


「思ったんだけどさ……いや、こっちからその気になるのはちょっとあれだと思うっすけど、本当に戦争になってしまったら、フェリスさんに助力をお願い出来ないっすかね」


「…………それは、どう……なんだろう」


本当にこの屑マッドサイエンティストがやり取りしていた国……ゲーデルガンブ帝国が仕掛けてきたら、正直のところ頼りたい。

でも、それは頼り過ぎというか、フェリスさんにとって迷惑じゃないか?


「強いキメラを造るには、強いモンスターが必要じゃないですか。それなら、フェリスさんやルーフェイスと同じ狼竜が狙われる可能性があると思うんすよ」


「可能性としては、絶対にあり得ない話ではないですね。フェリスさんやルーフェイスと同じ狼竜が、そう簡単に捕らえられるとは思えませんが」


メリルの言う通りだ。

そもそも狼竜がそう簡単に捕らえられるとは思えない。


狼竜を捕らえようとして失われる戦力を考えれば、その戦力を戦争に向ける方がよっぽど良いだろう。


「ま、待て、そのフェリスさんというのは、いったい誰のことなんだ?」


「フェリスさんというのは、ルーフェイス……この狼竜の母親です」


「「「ッ!!!???」」」


あれ? すっごい驚いてるな。

一年生の時にアルガ王国に行く際、フェリスさんの情報は多少なりとも広まってると思ってたんだけど。


「この狼竜の母親……となれば、そのフェリスさんという狼竜の実力は……」


「エグいぐらい強いです。とりあえず俺たちが全力で、それこそ殺す気で挑んでも勝てないかと」


「そうですね。ラガス坊ちゃまが本気の全力を出したとしても、良くてフェリスさんが笑いながら戦うかもしれない……といった程度ですかね」


「はは、残念ながらその通りだろうな。そんな感じで超強いんですけど、まだそういった事態の時に、本当に手を貸してくれるかは分からないんで、戦力には入れないでおいてください」


「あ、あぁ。勿論」


一先ずこの先起こるかもしれない話し合いを終え、今度はクソマッドサイエンティストを乗せて王都に再度向かい、幽閉を終えてから……もう一度手が空いている優秀な騎士を現場に連れて行く。


書類とかに関してはクソマッドサイエンティストと一緒に王城へ持って行ったけど、動かすのに慎重にならないといけない物がある。


騎士の数も、ルーフェイスに乗せて移動できる人数だけではまだ足りない。


「それでは、後はお願いします」


「おう、任せてくれ! こっからは騎士の領分だ。ゆっくり休んでくれ、ラガス君」


「ありがとうございます」


こうして、この一件はとりあえず終わった。

はぁ~~~、俺今回殆ど何もしてないのに、超疲れた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る