雰囲気で解る

「ここがノールス、か……」


無事に目的の街であるノールスに到着したは良いが、正直……活気がない。


「あまり、活気がない、ね」


「そうだな。街全体が死んでるとまではいかないが、街の大きさと比べて少々空気が重いというか沈んでるというか……とりあえず、冒険者ギルドに行くか」


街の人たちには申し訳ないが、俺は心の中でガッツポーズを浮かべた。

何故なら……街の雰囲気にそこまで活気がないということは、まだファイルトロールが討伐されていないという証拠。


「良かったですね、ラガス坊ちゃま」


「あんまり表情には出せないけどな」


俺だけじゃなく、メリルやシュラも街の状態から、まだファイルトロールが生きてる可能性が高いと把握。


セルシアも……うん、他人は解らないだろうけど、ちょっとワクワク感が漏れてる。


「ここがノールスのハンターギルドですね」


歩くこと数分、ハンターギルドに到着。

ルーフェイスには表で待っている様に頼み、俺たちだけで中へと入る。


う~~ん……どうやら、予想通りハンターギルド内も、あまり雰囲気がよろしくない。

かなりのハンターがファイルトロールに殺されたのか、もしくは彼らなら討伐出来ると期待されていたハンターたちが殺られたか?


「すいません、買取お願いします」


「かしこまりました」


既にハンター登録自体は終えてるので、買取カウンターに直行。


「っ!!?? へっ……嘘、でしょ。あっ、でも……」


亜空間から取り出された素材の量に驚き、俺たちのランクに再度驚く。

そんで、俺たちの名前を見て目の前の現状に納得した……って感じか?


「少々お待ちください」


提出した量が量だったので、多少時間がかかりはしたが、換金終了。


「あの、ランクアップの更新を行えますが……どうしますか?」


「えっ? 俺ら……まだ一回も依頼を受けてないんですけど」


「そうみたいですね。ですが、ウッドからアイアンへは一定以上の戦闘力があると確認されればランクアップが可能ですので」


「……なら、お願いします」


ハンター登録する際、アイアンの更に上であるエメラルド、押し通せばサファイアランクからスタートすることが出来た。


ただ、どうせ強い奴と戦う旅と決まっているので、勝手にランクは上がっていく。

だからランクは一番下からスタートした。


「あっ、ちょっとファイルトロールについて聞きたい事があるんですけど良いですか」


「ふぁ、ファイルトロールについてですか!?」


「そうです」


モンスターの情報を得るのであれば、やはりハンターギルドの職員に聞くのが手っ取り早い。


そう思って尋ねたんだが、いきなり複数の同じハンターたちが詰め寄ってきた。


「おいルーキー、ちょっとモンスターを狩れるからって、調子に乗ってんじゃねぇぞ」


……うん、そうだったな。

昼過ぎとはいえ、ギルド内には俺達以外のハンターがいた。


筆談で訊けば良かったか? 


「ルーキーって……そっちも、俺らとあんまり変わらないよな?」


年齢や装備の質を視る限り、手合わせはしてないが、とてもルーキーの域を抜けてるとは思えない。

よっぽど自身の実力を隠すのが上手いなら話は別だけど。


「うるせぇええ!!! 俺らはアイアンになってから既に一年は経過してんだよ! お前らとは訳がちげぇんだ!!!」


「……あっそぉ」


他に何かリアクションあったのかもしれないけど、そんな言葉しか出てこなかった。


だって……アイアンランクになってから、一年もそのままってことは……基本的に一年前から殆ど成長出来てないってことだろ。

なのに、なんでそのことについて、そんな偉ぶった態度を取りながら言い散らかせるんだ?


「ラガス坊ちゃま、彼らは考える頭を持っていないのです。ですから、意味もなく自身の経歴をあたかも凄い風に宣言できるのです」


とても解りやすい解説をありがとう、メリル。


ただ……お前、今絶対に目の前の奴らをわざと煽っただろ。

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