血までは戻らない

「そろそろ幕引きといこうか!!!!!」


「ふざ、けるな!!!!」


いやぁ~~、本当に凄い根性だな。

生命力を力に、魔力に変えてるとはいえ、あそこまでシュラ相手に戦えるとはな……でも、さすがに終わりだ。


「ぬんっ!!!!」


「がっ、は!!!???」


鬼火を拳に纏った煉獄の一撃。

いくら生命力を回復力に変える力があっても、気を失ってしまえば、それも出来ない。


「そ、そこまで!!!!」


審判がルカ・キシウスの様態を診て、速攻で止めた。


ぶっちゃけ、まだ立ってくるかと思ってなくもなかったが、もう立てなかったか。

まっ、これ以上立たれれるのもな。


「おぅ、シュラ。お疲れ様」


「……ラガスさん」


「なんだ?」


「どうせつまらない戦いばかりかと思っていたが、初めてこの大会に参加出来て良かったと思った」


「はっはっは!!! そりゃ良かったぜ」


あれだけバチバチに戦り合えたんだ。

良い感じに戦闘欲が満たされたみたいだな。


「ラガス坊ちゃま、あれを」


「ん? ……おいおい、マジか」


リングが今でぶっ飛ばされ、審判が続行不可能だと判断した。


にもかかわらず、ルカ・キシウスは意識を取り戻したのか、起き上がろうとしていた。


「ま、だ。俺、は」


「もう試合は終りました。これ以上続行は不可能です!!!」


審判が試合終了になったと伝えると、ようやく崩れた。


「敵ながら天晴れ、ってやつだよな」


「そうですね。従者二人も最後まで折れていませんでしたし、本当に大したものです」


そうだな。三人とも大したものだ。

でも、あの血の量は不味い。


鬼火を纏った一撃を食らい、骨を超えて内臓もボロボロになっただろう。


仮にその骨と内臓を治せたとしても、口から思いっきり吐いた血までは取り戻せない……よな?

そこまでなんとかなってしまったら、マジで強力過ぎるというか、チートというか……いや、俺が言う言葉じゃないか。


「はぁ~~、やっぱり俺も戦ってみたかったな」


「非常に楽しかったぞ、ラガスさん。あんな執念を持った男との戦い……そうそうできるものではない」


「ったく、嬉しそうに話しやがって」


メリルの前ではカッコつけたが、やっぱり羨ましいものは羨ましかった。


この戦いの後も戦いは続き、俺たちも次の対戦相手と試合を行うが……ルカ・キシウスを超える生徒は現れなかった。


そう……生命力を力に変えるという禁断の力を使った状態ではあったが、セルシアの全力を超えていた。


「ねぇ、私より、あの生徒の方が、強かった?」


「ルカ・キシウスの事か? そうだな……随分無茶な力を使ってたけど、あの状態のルカ・キシウスは、確かにセルシアより強かった」


最後まで鬼火こそ使わなかったが、シュラだって無傷ではなかった。

体にはいくつも切り傷を付けられ、多少は血を流していた。


本人から聞いたが、それなりにヒヤッとした瞬間があったらしい。


「ふ~~~ん……」


「なんだ、嫉妬してるのか?」


「別、に。そんなんじゃ、ない」


あまりそうには見えないけど……そこは触れないでおくか。


「言っとくけど、対抗してルカ・キシウスが使った力を自分も使おうなんて考えるなよ」


「……それは、解ってる、よ」


いや、どう考えても身に付けようと考えていた奴の間だろ!!


「言っとくけど、本気だからな。あんな技、普通は覚えようと思っても覚えられないし、覚えたところでデメリットが大きいんだからさ」


「うん、解った」


なら良いんだけど。


焦らずとも、セルシアならまだまだ強くなる。

しっかし……これまで、ずっと俺が優勝でセルシアが準優勝だな。


予想していた通りだから、別に問題無いというか、俺たちとしては一応嬉しいから良いんだが……アルガ王国は、面子的に大丈夫なのか?


バカ王子はもしかしたらメンヘラ? になってるかもしれないし…………って、元々あいつが元凶みたいなもんだし、これ以上あれこれ悩むのは無意味だな。


とりあえず腹減ったし、今日もがっつり食べよう。

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