格下だと認めないだろ

「まっ、こうなるよな」


国際大会の、全ての日程が終了。

結果は、全種目ガルガント王国側が優勝を収めた。

というか、準優勝も殆どそうだな。


戦っている最中は、ガルガント王国とかアルガ王国の国民関係無しに盛り上がってた。

でも、いざ全種目が終わり、表彰式になると、アルガ王国側は一つも優勝出来なかった事実を突き付けられる。


勝った側の俺がこんな事思うのもあれだけど、こっちは完全勝利で、向こうは完敗でお通夜状態。

表面上は俺やセルシアたちに拍手を送ってくれてるけど、よ~~く見ると、大なり小なり表情が死んでるのが分る。


良いバトルが観れたのは嬉しかっただろうけど、自国の生徒たちが一つも優勝できなかったとなると、やっぱり悔しいというか……俺たちに惜しみない拍手や賞賛を送るのは無理だろうな。


「この大会、来年も正常に行われるのでしょうか」


「急にどうしたんだよ」


優勝した証となるトロフィーなどを受け取り終わり、祝勝会が行われるレストランに向かっていると、メリルが不穏な事を口にした。


「いえ、今回の大会では、当然と言えば当然の結果ですが、こちら側が圧倒したじゃないですか」


「そうだな。多分、来年や再来年とかも……圧勝とはいかずとも、うちの生徒たちが目立つと思うぞ」


レアードとセリスがあと二年はいて……二年後には、セルシアの妹と弟も入学してくる。

それを考えると、アルガ王国には悪いけど、来年も再来年も目立つのはガルガント王国になりそうだな。


「それを、向こうが良しとしますか」


「それは……良しとは思わないだろうな」


でも、次こそは勝ってやるって、少なくとも今年参加した一年生や二年生は雰囲気するんじゃないか?

もう俺やセルシア、リーベにジークは来年には卒業してるわけだし。


「もしかしたらですが、ルールの改正などを求めるかもしれませんよ」


「ルールの改正……いや、改正する部分はないと思うんだが」


サラッと思い返したけど、特に俺たちの有利になるルールはない。


普通の試合らしいルール。

リングに設置したマジックアイテムのお陰で、生徒たちが死ぬことはないし。


まっ、ルカ・キシウスが最後にシュラから食らったような一撃は一瞬で治らないみたいだけど。


「言い方が良くありませんでしたね。ルールを追加してくるかもしれません」


「……俺は、その可能性はあまり高くないと思うが」


シュラ的には、アルガ王国側がルールの改正や追加を求めてくることはない、という考えが強いようだ。


「何故ですか? 今回の失態……言葉が悪かったですね。あまり成績が振るわなかった結果を考えれば、少しでも自分たちの有利な状況に持っていこうと考えそうでは? 特に上の者たちが」


この考えには、納得せざるを得ないな。


自国の大会以外に、他方面に自身の力をアピール出来る舞台と考えれば、少なくとも生徒たちの大半は奮起してる……はず。


「そう考える奴らもいるだろうな。けど、そんな提案をすれば、自分たちの方が格下なので、どうか手加減してくださいって言ってるようなものだろ」


ふむ、それもそうだな。


ルールの改正や追加を求めそうなのは国の上層部ってイメージがあるけど、隣国に自分たちの方が劣ってると思われるのを嫌うのも、国の上層部ってイメージだな。


「なるほど……まぁ、もう私たちにはどうでも良いことですか」


「はっはっは! 確かにそうだな」


学生最後の大きなイベントが終わった。

バカ王子……ブリット・アルガの暴走を心配していたが、今のところは問題なし。


周囲の注意を聞かず、自傷行為を続けてるみたいだが……もう知らん。


惚れた女の子にアタックするのを諦めろとは言えんが、真正面から嫌われたんだから、どこかで気持ちに区切りを付けるべきだった。


それを周りの大人が伝えたのか否かは知らないけど、できれば一生引き籠りになって欲しい。

アルガ王国にとっては困り過ぎて泣きたくなる問題だと思うけど。

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