失礼だが、疑いたくなる
「お疲れ、レアード」
「ラガス兄さん。最後の攻撃、どうだった」
「最高に良い一撃だったぞ」
うん、本当に良い一撃だった。
その前に入れたフェイントも上手かった……じゃなくて、他に伝えることがあるだろ!
「レアード、無事に三回戦まで勝ち上がることが出来た訳だが、次の試合が始まるまで、絶対に複数人で行動しておくんだ」
「えっと……何でですか?」
「何でって、あのバカ王子が暴走するかもしれないだろ」
兄としては、本当にそれが心配だ。
もしレアードに手を出そうものなら、全身の骨をバキバキに折ってから、思いっきり呪弾をぶち込んでやる。
うっかり殺してしまわない様に気を付けないとな。
「えっ、でもあんなのでも王子なんでしょ。さすがに、そこまで馬鹿じゃないと思うんだけど」
「あぁ~~~、お前はあの場面を見てなかったんだな」
大会が始まる前に、セルシアと数年ぶりに再会したバカ王子の様子を伝えた。
すると、レアードの顔は思いっきり引き攣っていた。
やっぱりそういう反応になるよな。
「そ、そんな事があったんですね」
「そんな事があったんだよ。にわかには信じ難いかもしれないが、紛れもない事実だ。それに、あいつは自分の負けが認められなくて、王城から去ろうとする俺たちの元に来ようと、王城内で魔法をぶっ放す大馬鹿だぞ」
「そういえば、そうでしたね……あの人は、本当に王族なのでしょうか?」
「失礼なのは分かってるけど、ちょっと怪しいところだよな」
こうして諸々事情を説明し、レアードも納得してくれた。
できれば、あのバカ王子がトチ狂わないことを祈るばかりだ。
なんて考えているうちに、トーナメントはどんどん行われていく。
開催する種目が多いため、試合は夕方になっても続き……その日の夜に決勝戦が行われる。
「本気でいくよ、ラガス」
「おうよ」
当然……と言える程楽な試合ばかりではないが、個人戦に関しては俺とセルシアがぶつかることになり、既にアルガ王国側の生徒たちは全滅していた。
アルガ王国側の人間としてはつまらない……と思ってはいなかったようで、バトル中には三百六十度、全体から声援が聞こえた。
熱いバトルが目的で観に来てる人たちからすれば当然か。
面白く思ってないのは……アルガ王国のお偉いさん達だけかもな。
「……解ってた、けど。今日も、敵わなかった」
「そう簡単には抜かされないぞ」
本日も俺の勝利。
とはいえ、今日の真剣勝負では結構動きを読まれた気がする。
こりゃ、一本取られる日はそう遠くないかもな……まっ、追いつかれるつもりはないけども。
こうして個人戦のトーナメントは、俺が優勝でセルシアが準優勝という結果で終わった。
既に時刻は夕食時を少し過ぎており、会場から宿に戻ったら即飯。
明日はタッグ戦のトーナメントにセルシアと一緒に出るので、しっかり体力を回復しておかないとな。
「そういえばラガス、あの王子は結局動かなかったようだな」
「まだ油断出来ないよ」
レアードに負けたバカ王子、ブリット・アルガが動くことはなかった……が、俺的にはまだ気が抜けない。
今日はまだ、レアードを陰で潰す準備が出来ていなかっただけかもしれない。
レアードは明日のタッグ戦にセリスと一緒に出るし……アルガ王国側のタッグには、ちょっと注意しておいた方が良さそうだな。
あの二人がそう簡単に負けないってのは解ってるけど、どんな手を使ってくるか……王子様からの命令じゃ、逆らえない奴らも出てくるだろうしな。
そんな不安を持ちながら国際大会一日目が終了し、二日目がスタート。
二日目は観客たちにサクッとルールを説明したら、直ぐに試合開始。
個人戦の時と同様に、観客たちは非常に盛り上がっている。
因みに……昨日の個人戦で活躍した組は、俺も含めて本日のタッグ戦でのオッズはかなり下がっていた。
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