心配……し過ぎ?

二日目、タッグ戦のトーナメントが始まり、俺とセルシアは先日と同様に優勝を目指して戦う。


ただ、俺たちは相変わらず下手に連携を鍛えるよりも、単独で戦った方が良い。

ガルガント王国側の生徒たちはそれを知っているが、タッグ戦なのにソロで戦おうとする俺たちに、アルガ王国側の生徒たちは面食らってたな。


タッグ戦なのに、その戦い方はどうなんだ! って批判は飛びそうだけど、観客たちは結局盛り上がってたし、特に気にしなくて大丈夫だろう。


一先ず初戦は楽々突破。

レアードとセリスの二人も余裕の圧勝だった。


二人の個人戦力だけじゃ……って、二人なら個人の力でも上級生に引けを取らなかったな。

でも、何だかんだでタッグ戦の方が生き生きとしてる。


後、スレイドとフローラさんのタッグも初戦を超えた。


優勝候補と呼ばれてるタッグが二回戦に駒を進める中……相変わらず俺の心には、不安が残っていた。


「…………」


「ラガス、大丈夫?」


「大丈夫……だけど、不安が消えないかな」


今、俺たちはタッグ戦のトーナメント表が張り出されている場所にいる。


俺たちとレアードたちがぶつかるには、決勝戦まで進まなければならない。

その間に、レアードとセリスはアルガ王国の生徒たちとぶつかる。


「レアードと、セリスは強い、よ」


「うん、解ってる。それは解ってるよ。でもな……」


一年生の校内戦の時に、麻薬を使って無理矢理身体能力を上げてでも、セルシアとパートナーになった俺を憎み、殺そうとしてきた男を思い出す。


人はその気になれば、自分の全てを捨ててでも、殺したい相手を殺しにいく。


二人とこれからぶつかるであろう、アルガ王国の生徒たちが、今はそんな殺意を持ってないだろうけど……あのバカ王子が何かを命じて渡せば、最悪の可能性が起こらないとは言えない。


「リングで、何か起これば、私も、直ぐに跳び出る」


「……ありがとな」


まっ、何かリングで異変が起これば審判が早急に止めるとは思うが……まさか、審判の買収とか考えてねぇよな?


あぁ~~、やべ~~~~。

考えだしたら本当にキリがない。


なるべく試合に集中しよう、試合に集中しようと思って動き続けていたら……あっという間に決勝戦まで到着。

決勝戦の相手は、スレイドとフローラさんのタッグ。


スレイドとセルシアが中央でバチバチに戦っている後ろで、俺はフローラさんと遠距離合戦を行っていた。

俺の方はフローラさんの力量に合わせたバトルで、中央で激しい攻防をしている二人に迷惑掛けない様に戦っていたので、魔力の残量やらなんやらで、先にこっちが決着。


二人の方が、五分? ぐらい経ってからセルシアが一歩リードし始め、そのまま優勢に進め……スレイドが降参を宣言し、終了。


タッグ戦も俺たちの勝利で終わった……そう、何も問題が起こることなく終わった。

いや、普通に有難いし、嬉しいよ。

二人の身に何も起こらなかったんだからな。


ただ……あのセルシア大好き人間が、何もしてこない訳あるか?


「浮かない顔ですね、ラガス坊ちゃま。また心配事ですか?」


「そうだな。心配事というか、不安というか……あのバカが、このまま何も起こさずに終わるのかと思ってさ」


バカ王子は個人戦にしか参加していないので、他のトーナメントで名誉挽回する機会がない。


俺が全てに参加するから、結局そんな機会、全くないと言えばないんだけどな。


「初の国際大会ですから、向こうも不祥事を起こさない様に厳戒態勢を敷いているのでしょう」


「……だと良いんだけどな」


メリルの言葉は納得出来る。

納得出来るんだが、やはり不安はそう簡単に消えない。


そう思ってると、なにやら暗い表情のフォルスたちとばったり遭遇。


「あっ、お疲れ。やっぱり二人とも想像以上の強さだよ」


「おぅ、ありがたな。ところで、なんでそんな表情が暗いんだ?」


っと、口にしてしまってから、互いの立場的にその発言は不味いと思った。


ただ……どうやら、フォルスたちの表情が暗いのは、俺とセルシアが優勝したのが理由ではなかった。

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