狙っていた一撃

一回戦が終わった後、程なくして二回戦目が始まる。

二回戦目でも同士討ちなどはなく、勝ち上がるだろうと予想されていた者たちが勝ちあがる。


つっても、観客たちからすれば、まだ一年生のレアードが一回戦だけじゃなくて、二回戦目も勝ち上がるのは予想外か。


「ラガス兄さん、あのば……第三王子って、強いんですか」


こいつ、俺と同じ様にバカ王子って呼びそうになったな。

いや、これに関しては、一国の王子をそう呼んでた俺が悪いか。


「試合、観てたんだろ」


「はい」


「なら解るだろ。間違っても、油断して良い奴じゃない」


一年生の頃に行ったバトルは、俺も結構本気だったというか……周囲にいた騎士とかに止められる前に、思いっきり呪弾を浴びせさせて、睾丸を本当の意味で潰したかった。


だから、かなり本気で潰しに行ったからこそ、バトルは呆気なく終了してしまった。


「……そうですね」


「まっ、あいつも大差の勝利って訳じゃないから、レアードに勝機が全くないってことはないだろ」


王族らしい力は持ってるみたいだけど、そこまで飛び抜けた力じゃない。

現時点での二年という差は大きいかもしれないが、本気で自身を鍛え始めた期間なら、レアードが上だ。


「最初は奇襲を仕掛けるのもありかもな。それが失敗したら、普段のお前らしい戦いで攻めれば良い」


「変に隙を狙い続けず、自分の力を信じて戦い続ければ良い。そういうことですよね」


「だな。頑張れよ。公式の場なんだから、王子様をぶっ飛ばしたって、非難を食らうことはない」


「はい! 全力でぶっ飛ばしてきます!!!」


うん、コンディションは問題無さそうだな。


「ラガス、お前の弟はあの王子に勝てそうか」


観客席に戻ると、リーベがその勝負の勝敗について尋ねてきた。


「……正直、やってみないと解らない部分はあるだろう」


いや、本当にそうだと思ってる。

レアードが俺やセルシア、リーベと同じ様に一年生という立場を考えれば、頭おかしいと思われる実力を持っているのは間違いない。


ただ、あのバカ王子もあれから死ぬほど鍛えたんだろうな。

王族としては相変わらず汚点かもしれないけど、実力だけなら恥ではない……と、思う。


「でも、レアードが毎日本気で鍛えてるのは、リーベも知ってるだろ」


「あぁ、勿論だ。俺が一年生の時に出会っていれば、こんな化け物が世の中にいるのか、と思っただろう」


「それはちょっとリップサービスが過ぎるんじゃないか?」


確かにレアードはセリスと同じく、一年生にしては桁外れの実力を持ってるけど、一気に成長して羅門まで覚えたリーベなら、レアードに対して恐れることはない。


「……羅門を抜きにすれば、絶対に勝てると言えないさ」


「謙虚だな」


そうこう話してる内に、バカ王子とレアードが舞台に上がった。


緊張は……してないみたいだな。

まっ、それはバカ王子も同じか。


「それでは、始め!!!!」


審判の気合が入った掛け声と共に、試合開始。


硬直状態はなく、いきなり両者ともフルスロットルで動き始めた。

バカ王子がレアードを格下に見て、最初は余裕を見せると思ってたけど、どうやら戦闘に関しては本当に成長してるな。


「はっはっは!!! 流石だな」


「いや、本当に流石というか……抜け目がないというか」


二人の試合は他の試合と比べて長く、始まってから六分が過ぎた。

そろそろスタミナ、もしくは魔力切れで戦況が大きく揺らぐと思い始めた。


しかし、レアードが戦闘スタイルを一転させ、接近戦メインで動き始めた。

多分……ランナーズハイに近い状態だったと思う。


どれだけ本気で動いても、一定時間は疲れを感じない。


バカ王子も最初こそ少し驚いてたが、直ぐに対応した……と思った瞬間に、渾身の蹴りが股間に向けて放とうとしたレアード。


そこでバカ王子は大袈裟にガードしようとしたが、それはフェイク。

レアードは宙に跳び、体勢を整えて踵落とし頭部にぶち込んだ。


それが決め手になり、決着が着いた。

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