どれだけ金を使ったのやら

「お疲れ様です、ラガス坊ちゃま」


「あぁ、ありがとう……ていうかさ、そろそろ坊ちゃまは止めてくれないか。俺、今年で十五になるんだぞ」


「そう言われましても……私にとって、ラガス坊ちゃまはラガス坊ちゃまなので」


大会の諸々を終えて、祝勝会をした夜にいつもの面子でゆったりとしている。


そして、そろそろ呼び方を変えてくれても良いのではとメリルに申したのだが、サラッと躱された。

会話が通じないというより、もう……あれだよね。変える気はありませんよっていう宣言だよな。


「俺もラガスさんから、変えた方が良いっすか?」


「いや、シュラはそのままで良いよ」


普通は様付で呼ぶんだろうけど、シュラは……うん、このままで良い。

メリルにはそろそろ呼び方を変えてほしいけど、今は言っても無駄そうだから、とりあえず諦めよう。


「それにしても、今年も……いえ、今年は圧勝でしたね」


「だな」


レアードとセリスが揃って入学してくれたから、一年の大会では二人が完全に無双した。

二年生たちも非常に頑張ってくれた。


お陰で団体戦以外の六つのうち、五つはロッソ学園が手に入れた。


「……」


「どうしたんだ? セルシア」


今年も超好成績を収めることが出来、満足してると思ってたんだが……若干不満そうな表情が浮かんでる。


「今年も、ラガスに、勝てなかったから」


「そういうことか。まぁ、俺だって毎日頑張って鍛えてるからな。そう簡単に追いつかれたら困る」


いや、マジのマジでだよ。

リーベとの試合ではうっかり獣魔法を使ってしまったけど、セルシアとの試合では初っ端からガゼルエンジンを使ったからな。


ステータスを考えれば速さ寄りなんだけど、獣魔法を使わないと……うん、セルシアには追いつけなさそうなんだよな。


「……いつか、リベンジする」


「受けて立つよ。ただ、意外とのその機会は直ぐにくると思うぞ」


「? ……もしかして、正式に、開催……されるの?」


「あぁ、そうだ。一応まだ極秘だから、他の人には伝えないでくれよ」


三年生最後の大会が始まる数日前に、国王陛下から一通の手紙が送られてきた。


その手紙には、予定通り……今年、学生による国際大会が行われると記されていた。

勿論、その手紙は既に燃やしており、灰すら残っていない。


「……それは楽しみ」


「本当に楽しくなると思うぞ」


毎年国内で行っている大会よりも、開催期間は長い。

開催される種目も多いので、非常に盛り上がるだろう。


まぁ……そういう設備を造るのに、いくらほどの金がかかったのかは知らないけど。

多分、俺の懐にある金じゃ絶対に足りないぐらいの金が使われただろうな。


試合会場を造るだけじゃなくて、宿泊施設も必要になるだろうし。


「例の大会ですか。おそらく、裏で大金が動くのでしょうね」


「はっはっは! それが大きな収入源となるだろうからな」


手紙には、リングに特別なマジックアイテムを使用していると書かれていた。


リングから選手を外に出せば、受けた傷は元通り。

死ぬことはない……って書かれてたから、毎年開催される大会以外でも、十分使い道を用意してる。


そのマジックアイテムを手に入れるのに、どれだけの金が消えたのかは知らないけど。


「しかし……こちらの圧勝で終わるのではないですか?」


「言うなぁ、メリル。向こうも向こうで粒が揃ってるとは思うけどな」


「ラガス坊ちゃまがそう言っても、リップサービスにしか聞こえませんわ」


うぐっ、そうかもしれんけど。


でも、国王陛下にもあまり早く試合を終わらせ過ぎないでくれって言われたし……そこそこ全力を出せるのは、リーベやセルシア……後はイーリスとのバトルぐらいか。


「とりあえず、数週間後には開催地に行くことになる」


種目ごとに選手選考があるらしいが、とりあえず俺とセルシア、後リーベやイーリスは確実だろう。


そして大会が終わった日から二日後、俺たちはいきなり王城に呼ばれた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る