そういうのに参加して良いのか?
「だぁ~~~~、また負けた~」
セリス……負けて悔しいのは解るけど、女の子が大の字で床に倒れるのは良くないと思うぞ。
「セリス様、はしたないですよ」
「は~~い……はぁ~~~、ラガス兄さんまた強くなってない?」
「それはこっちのセリフだ」
夏休みの頃と比べて二人のコンビネーションの練度が格段に上がってる。
加えて、当然といえば当然なんだが、個々の実力も着実に上がってる……俺が言うのはおかしいんだろうけど、二人とも末恐ろしい存在だ。
「俺も多少強くなってるかもしれないが、上り幅で言えば二人の方が大きく成長している」
確実に成長はしてるが、それでも学園に上がる前の俺でも今の二人には対応出来た。
結果的に一瞬だけヒヤッとはしたが、自信過剰な言い方だが、当然の結果。
「ラガス坊ちゃまの言う通りですよ。お二人の実力は以前と比べて上がっています」
「本当?」
「えぇ、勿論です」
「俺も同じ考えっすよ」
メリルとシュラの言葉に嘘はない。
もしかしたら、シュラに関してはこのままだと追い抜かされるかも!! って思ってそうだな。
まだまだ一対一の模擬戦ではシュラの方が断然強いけど、一対二の戦いだと……シュラでも足元掬われる可能性がゼロではない。
「……でも、戦えば戦う程ラガス兄さんとの差が広いって感じるようになる」
「僕も同じ気持ちかな」
「…………」
こ、これはとりあえず、俺が何を言っても意味がないというか、二人の心を奮い立たせる結果にはならなそうだ。
「お二人は、今の自分たちが弱いと思っているのですか?」
「……どうなんだろ? ここ最近、訓練したりモンスターを狩ったり兵士や騎士の人と模擬戦ばかりしてるから……ちょっと良く分かんない」
「そうだな。今の僕たちって、どれぐらい強いんだろ」
……二人とも、モンスターを相手にビビらず戦えてるんだから、そこら辺の子供より十分強いぞ。
って、俺が言っても意味ないんだよな。
「でしたら、一度同じ歳の方々と戦ってみてはどうでしょうか。お二人とも、最近は社交界に参加していないとお聞きしましたよ」
「「うっ」」
そう言えば母さんがポロっと愚痴をこぼしていたような……でも、別に俺的には悪いことだとは思わないぞ。
だから、二人ともそんな罪悪感を感じる必要はないぞ。
なんて馬鹿正直に言ったら絶対にメリルに怒られそうだ。
「……メリル、それ良いのか?」
「良いのか、というのはどういう意味でしょう」
「どうって……」
別に父さんから直接聞いた訳じゃないけど、多分……二人が同世代が集まって実力をぶつけ合う場に興味がないってのもあるだろうけど、父さんが意識してそういった場に連れて行こうとしてない。
そんな気がするんだよな。
「二人が興味あるなら丁度良い同年代と戦ってみるのもありだと思うけど」
絶対にやめた方が良いなんて言わない。
言わないけど、二人と戦える子供っているか?
セルシアの弟と妹なら……いや、現段階だと体格差的に厳しいだろうな。
他の令息や令嬢たちが真面目に頑張っていないとは思わないけど、まともにぶつかれば二人が勝つだろうし……戦った相手の子が自信喪失するだろ。
父さん的にはそれを恐れているというか、若い目を潰してしまうことになる? とか考えてそうな気がするんだよな……結局は全部俺の憶測なんだけどさ。
「ラガスさん、これから俺たちと戦い続けて負け癖が付くよりも、一回自分たちは強いんだって思える機会を得た方が良いと思うっすよ」
「それは……そうだな。確かに負け癖が付くのは良くないな」
とはいっても、二人はモンスターが相手なら無理しない範囲で勝ってるんだよな。
その勝負での勝利では自信に繋がらないのか?
「……分かったわ。今日訓練が終わったら、父様に頼んでみる」
「僕もそうする」
「その方がよろしいかと。それでは、次は私がお相手致しましょう」
この日、結局夕方になるまで俺たちが一対二の勝負に負けることはなかったが、最後まで二人の眼から闘志が消えることはなかった。
ーーーーーーーーーーー
新作「禁断の恋にカオスをぶっ込む? 期限付きの男子高校生と美人教師の危ない関係」の投稿を始めました。
読んでくれると幸いです。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます