案外良い刺激になった?

イーリスたちと別れた俺は……予定通り、実家に帰った。


そして実家に帰ってから一週間後ぐらいに、リザード公爵様からお礼の手紙と約束の黒曜金貨二枚と大量の重変石が届いた。


実家に帰ってからは、しばしば休息を取る……なんてことにはならず、レアードとセリスたちに模擬戦をせがまれる日々が続く。


学園に入学してから色んな事があり過ぎたからか、今年の冬はなるべくのんびり過ごしたいという思いがあった。

一応一日の間に体を動かしはすれど、魔靴や他のマジックアイテムの制作に時間を使おうと考えていた。


「今日こそ勝つよ、セリス」


「えぇ、今日こそ倒して見せる!!」


意気揚々と声を張る二人の前に立つのは……そう、俺。

メリルに頼んで二度寝をし、少し遅めの朝食を食べてから、ポーション造りに励もうと思っていたが、二人に引きずり出された。


お前たち、勉強の方は良いのか?

と尋ねたいところだが、それを尋ねたところで二人からの模擬戦を逃れられるとは思えない。


軽く準備運動を終えた後、実家に帰ってきてから何度目になるか分からない一対二の模擬戦を始める。


メリルが模擬戦開始の合図を行い、二人が勢い良く走り出し、俺に向けて木剣と棍棒を振るう。

こうして模擬戦をすると、二人が半年前と比べてまた強くなっているのが解る。


セリスの剣は一段と鋭さが増してる。

魔力を纏わずとも、木剣でスパッと斬れそうだ。


レアードに関しても……お前、基本的に後衛だろ?

クレア姉さんやクローナ姉さんが後衛職でも前に出て戦える戦法を行ってるから、自分もそれに習おうとするのは解るが……もう、完全に見劣りしないレベルだ。


それにコンビネーションも以前と比べて上がってるな……まさに以心伝心って感じだ。

二人がダブルスの大会に出場したら、絶対に同級生のダブルスがボコボコにされる。


いや、同級生じゃなくても一つ上……もしかしたら、二つ歳上のダブルスが相手でも、レベルによっては勝ってしまいそうだな。


「っ、もう少し、本気で、やってよ!!!」


「っと、すまんすまん」


考え事しながら対応してたのがあっさりバレてしまった。


全力でやってとは言わないあたり、本当に俺が全力を出したらどうなるかは理解してるな。

感心感心。


とりあえず身体強化のアビリティを使って、身体能力を一段上昇させる。

そして言われた通り少し本気を出すので、受け一辺倒から六割ぐらい攻めを意識した戦闘スタイルに変更。


「はっ!!」


すると、直ぐにレアードが棍棒による物理攻撃だけではなく、攻撃魔法を使って攻め始めてきた。


ボール系の攻撃魔法を的確にぶつけてくる。

当然躱すか弾くけど、その行動を予測してセリスが斬りかかってくる。


セリスも木剣に魔力を纏い、強度を上げ……身体強化を使っていても、その一撃を今の状態で食らうと、少々痛いな。


攻撃魔法も使うようになったため、レアードの物理攻撃の精度が少し落ちるが、そこはセリスが頑張って動いてカバーする。

多分……というか、どう見ても即席の動きじゃない。


兵士や騎士たち相手に散々試したんだろうな。

それに付き合わされる者たちの事を思うと……案外、まだまだ子供たちには負けられないと、ケツに火がついて本人にとって良い切っ掛けになったかも。


結局頭の中で考え事をしてしまってるな。

二人とも強く放っているが、まだまだシュラやメリルの様に模擬戦の最中に俺をヒヤッとさせることはない……なんて余裕が零れそうになったタイミングで、セリスが魔闘気を纏い始めた。


おいおいお~~い、いくらなんでも成長し過ぎじゃないか!!??


レアードもボール系だけではなく、途中からアローやランス系の攻撃も混ぜ始め、最終的には魔弾も攻撃手段として使い、今日も兄としての威厳を守ることが出来た。


……やっぱり、疲れたから、寒いからって引き籠ろう精神になるのは良くないかもな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る