……手は抜いてないよ?

「……無理矢理、納得するわ」


「そうか、それは良かった……前にも言ったかもしれないけど、俺やシュラ、セルシアはそういう部分があるんだ。あんまり難しく考えない方が良いぞ」


「簡単に言ってくれるわね」


「事実だから仕方ない」


というか、実力的にはイーリスもこっち側に来てもおかしくないと思うけどな。


「それじゃ、目標は達成したんで戻りましょう」


ヘイルタイガーの素材をゲットし、ついでにホワイトワイバーンとスノードラゴンの素材までゲットできた。


この後、運悪くアイスドラゴンが襲ってくるようなことはなく、無事にウィルキリアまで戻ってくることが出来た。


「すいません、モンスターの解体をお願いします」


「はい、かしこまりました」


受付嬢さんはいつも通りのことなので、丁寧な態度で対応してくれたが、亜空間の中から取り出したモンスターを見て、腰を抜かした。


「へ、ヘイルタイガー……ですよね?」


「はい、そうですね。他にも解体してほしいモンスターの素材があるので、解体が終わったら連絡ください」


「おいおい、この二体以外にもまだモンスターがあるのかよ……へっへっへ、腕が鳴るな!!!」


解体士のおっちゃんたちは非常に嬉しそうな顔で解体を始めた。


確か、解体したモンスターの数や、ランクで給料が変わってくるんだったか?

それなら、後で出すモンスターの死体を見ても喜んでくれそうだな。


一旦、時間が時間だったので、泊っている宿で食事を取り、一時間後にはギルドの職員が解体終了の報告に来た。


「ありがとうございます。次は、これをお願いします」


今度はルーノさんたちが倒してくれたホワイトワイバーンを五体纏めて亜空間から取り出す。


「……マジか」


マジです。

嘘と思うかもしれませんが、マジなのでよろしくお願いします。


「後、こいつら以外にももう一体大きいやつがあるので、お願いします」


「……っしゃ!! お前ら、今日はぶっ倒れるまで働くぞ!!!!」


「「「「「うっす!!!!!」」」」」


リーダーの人が他の解体士たちを鼓舞し、どうやらモチベーションが下がることはなかった。


働いた分はしっかり給料が出るんだし、ブラックではないから当然といえば当然か。

ただ、ホワイトワイバーンの解体が終わった後にスノードラゴンの死体を取り出すと、さすがにちょっと疲労の汗が流れているというか……うん、絶望してたかな。


何はともあれ、冬休みの中盤に入る前に公爵様からの依頼は……まだ終わってないので、一日かけて要望の魔靴を制作し始める。


バルンク様の魔靴を造る時はかなり緊張したけど、今回はそこまで緊張することはなかった。

造り終えてから振り返ったが、単純にあの頃より数をこなしてるから……後、制作に使った素材は自分で手に入れたから、かな。


勿論、手抜きは一切していない。

一錬金術師としてそんなことするつもりはないし、なにより……公爵様相手にそんな無礼なこと絶対に出来ない。


「……うん、悪くないだろ」


「…………綺麗」


隣に座っているセルシアから賞賛され、一気に気持ちが軽くなった。

身内贔屓かもしれないが、公爵令嬢なんて俺より目が肥えている人にそう言ってもらえると自信になる。


因みにランクは六と、バルンク様専用の魔靴と比べても差はそこまでない。

いや、品質は……やや、リザード様の為に作った魔靴の方が高いかも。


「これが、魔靴……」


「ふぅ~~~、ようやく肩の荷が下りたというか、なんというか……ほい」


「えっ!!??」


「イーリス、お前実家に帰るんだろ。それ、リザード公爵様に渡してくれ」


「はっ!!!???」


何をそんなに驚いてるんだよ。

俺はリザード公爵が治める領地に行かないし、実家に帰るお前に渡すのは妥当だろ。


「それじゃ、頼んだぞ」


翌日の朝までギャーギャー言ってたが、結局最後はルーノさんやラージュさんが宥めてくれたので、事なきを得た。

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