意外とタフ

「一体は俺が貰う」


「なら、もう一体は俺が貰うっす」


「最後は……私が貰う」


丁度だな。


それじゃ、好きなようにやりますか。


「ちょ、ちょっと待ちな「待たない」……ッ!!」


イーリスが顔を真っ赤にして怒ってそうだけど、関係無い。


確かにこの……スノーベアーか?

ランクはCとそれなりに高く……動きを見た感じ、Cランクの中でもパワーは上。


というか、他のCランクのベアー、グリズリー系のモンスターと比べて体が大きい。

このモンスターにも、ベルクマンの法則が適応されてるのかもな。


「……よろしいのですか」


「問題ありません。私たちの中でも、ラガス坊ちゃまとセルシア様、シュラの三人は戦うことが大好きなので」


「そ、そうなのですね……それでは、周囲の警戒に意識を割いておいた方が良いですね」


「それが賢明かと」


そうそう。

ルーノさん、メリルの言う通り周囲の警戒をお願いします。

こっちに援護とかいらないんで。


「ガァァアアアアッ!!!」


「ん~~……やっぱり、それはちょっと邪魔だな」


邪魔というか面倒というか……地面を蹴りだす、下からの引っかきとかだと、積もった雪が飛んでくる。


当然、それが目つぶしの役割を果たすから、本当に邪魔。

スノーベアーの行動を予測していても、どの範囲まで雪や土が飛んでくるか分からない。


多分……こいつら、それが解ってやってるんだろうな。


「良いぞ、その調子だ! もっと暴れろ!!!」


シュラはそんなこと関係無しに……というか、上手いな。

近づいて接近戦に持ち込んでしまえば、向こうもそういう攻撃を狙い辛くなる。


下手に離れない方が得策って訳か。


なら、俺も近づいて素直に殴り合うか。


「ガァアアッ!!!」


殴り合うとは言っても、基本的にスノーベアーの攻撃は近づけば、引っかくのがメイン。

特に捻った攻撃方法はない。


特徴があるとすれば、爪に冷気を纏ってることぐらいか。


でも、冷気だろ……あんまり適切な攻撃とは思えないな。

切り裂いたとしても、冷気で傷口が凍るよな?


そうなれば出血による敵の行動性能のダウンが望めないし……まぁ、寒い攻撃ってのはそれだけで嫌だけどさ。


「俺がそんなこと考えても仕方ないか」


こいつの肉は美味かったし、是非とも個人体に欲しい。


「ふんっ!!!」


「ッ!? ガッ!!!」


「っと、タフだな!!!」


肉というより……脂肪が分厚いのか?

だからか、思ったより攻撃が内部に浸透してないのかもしれないな。


本気で殴ったら体に風穴が空くかもだし……このままでいっか。


丁度良いサンドバッグを殴るような戦いが続き、数分後には俺が対峙しているスノーベアーの動きが鈍くなってきた。


体の骨をバキバキに折るようなことはしてないが、全身満遍なく足から肩まで打撃を加えたから、全身の骨に罅が入ってる状態か?


「グゥ、ガァアアアアッ!!!!」


「最後まで闘志が折れないのは、素晴らしいな」


俺を絶対に逃がさない様にロックオンし、両爪を上から振り下ろす。


鋼鉄でも切り裂けそうな一撃だが、俺からすれば見え見えの一撃。

サイドステップで躱しながら上に跳び、かかと落としをスノーベアーの脳天にぶち込む!!!


「ガッ……ガ」


完璧に頭蓋骨が消え、脳まで潰れた。


よし……こういう環境の中でもCランクのモンスターが相手なら、ちゃんと戦えてるな。

まぁ、もし寒さ対策が出来てない状態ってのを考えたら無茶苦茶恐ろしいけど。


「お疲れ様っす」


「おう、お疲れ……両腕が、ねぇな」


シュラが戦ってた個体の方に目を向ける、そこには両腕がもがれたスノーベアーの死体が転がっていた。


「はは、ちょっとテンションが上がってしまって……でも、セルシア様も同じような感じで倒したみたいっすよ」


その言葉に釣られてセルシアの方に目を向けると、丁度両腕が切り落とされているスノーベアーが、セルシアによって首を切断されていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る